野球も勉強も「人に教えて」うまくなる 東大野球部元監督が勧める練習方法とは?

公開日:2022.03.02

更新日:2022.05.18

文:石川哲也 / Tetsuya Ishikawa

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元東大野球部監督で学習塾「Ai西武学院」の塾長を務める浜田一志氏が解説

 元東大野球部監督で、部活と勉強の両立を目指す学習塾「Ai西武学院」の塾長を務める浜田一志氏は、「何事かを習得しようとするときには『4つのT』のステップを踏んでいくことになる」といい、なかでも「Teach(教える)」の重要さを説く。野球にも、勉強にも共通する「教えることの効用」とは?

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 野球でも、勉強でも、何事かを習得しようとするときには「Trace(真似る、なぞる)」「Training(練習する)」「Think(考える)」「Teach(教える)」の「4つのT」というステップを踏んでいくことになります。

 まず、興味を持ったことを真似る、そして練習を繰り返してできるようになる、さらに上手になるように考える、そして人に教えられるようになって、ようやく自分のものになります。

 なかでも「Teach」は重要です。できる子ができない子に教えるというのは、教えている子にすごくプラスになります。

 先輩が後輩から「どうやったらそんなに上手く打てるんですか?」と聞かれたとします。感覚的なことを言葉にして説明するのは難しいですが、後輩からの質問となれば、先輩としてはちゃんと答えなくてはならないので、いろいろと考えるわけです。投手が足を上げたタイミングでテークバックを作ってとか、体重は軸足8割、踏み出す足2割とか、そうやって自分の良いところを分析するようになるんですね。

 人間は失敗したときに、何がダメだったのか原因を分析することはよくああります。ただ、自分の良いところというのは、できていますから、なかなか分析しようとはしない。だから、人に教えるというのは、自分の良さを分析する貴重な機会でもあるんです。

 自分の良さを知ることは、レベルが上がれば上がるほど必要になります。自分の良い状態を知っていれば、調子が悪くなった時に、何がまずいのかがわかるので、修正することができる。プロ野球選手は1打席目に全然ダメでも、タイミングを崩されていると分かったら、2打席目はそれを修正にかかりますよね。そういう能力が高くなるのです。

 人に教えるもう一つの効用は、相手を分析して予測する能力がつくということです。後輩から「明日の試合どうですかね?」と聞かれたら先輩は、相手の分析をしますよね。「あの投手は初球、変化球で入ってきて、追い込んだらインコースに投げ込んでくる。お前はインコースが苦手だから、2球目くらいに外に来た球を踏み込んで打ちに行った方がいいだろう」とかね。戦略を立てて試合に臨むようになるんです。

 だから指導者が一方的に教えるんじゃなくて、選手間で教えあうというのがすごくいい。そういう環境を整えてあげることが、周りにいる大人の役目だと思います。

○浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾「Ai西武学院」を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。2015年の東京六大学春季リーグで東大の連敗を94で止め、2017年秋には30季ぶり勝ち点を挙げた。

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