「自宅はエネルギー蓄える基地」と年中夢球氏…苦い経験から保護者に助言
自宅は「エネルギーを蓄える基地」が理想だという。野球講演家の年中夢球さんと滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が13日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のオンラインイベントに出演した。年中夢球さんは高校野球で活躍する選手を育てるには、保護者が結果を求めないことを挙げた。
指導者としての経験があり、全国各地で講演をしている年中夢球さんは、野球をしている子どもの保護者から相談を受けることが多いという。「高校野球で活躍するために大人がすべきこと」をテーマにした13日のイベントでは、親の関わり方が選手に与える影響の大きさを語った。
「親が子どもに対して“結果を求める言葉をかけない”ことが、一番良い親子関係を保てるのは間違いありません。高校野球になると、選手は外で結果について言われます。家に帰っても『安打は出た?』『エラーしなかった?』と聞かれた子どもは、しんどさを感じます」
年中夢球さんは「家は選手がエネルギーを蓄える基地」と表現する。満足な結果が出ていない時、自分でわかっていることを保護者からも指摘されると、エネルギーを失う。イベント参加者にも「保護者には選手の結果ではなく、経過を見てほしい」と訴えた。
SNSに投稿すべきは“結果”でなく“過程”「今日も素振り頑張ってます」
今でこそ保護者の良きアドバイザーとなっているが、実は苦い経験がある。イベントでは、野球をしていた長男との接し方に失敗したと明かした。当時、土日はチームの指導をしていたため、長男が中学や高校の時に試合を見に行けなかったという。
「どうしても結果が気になってしまい、自宅で長男に試合について聞いていました。ある日、見逃し三振したと長男に言われ、『あり得ないだろう』と怒ってしまいました。怒り終わった頃に長男のチームメートの保護者から電話が来て、その試合は初めて審判を務めたお父さんの判定で、明らかなボールをストライクと言われてかわいそうだったと聞きました。見ていないものに意見を言ったらいけないと反省しました」
こうした教訓から、年中夢球さんは試合での活躍よりも、日頃の努力に目を向ける大切さを保護者に伝えている。SNSに「きょうの息子は5打数5安打でした」ではなく、「毎日、素振りを頑張っています」と投稿する保護者が、選手の力になれると指摘する。
30年以上にわたって多賀少年野球クラブを率いている辻監督も「練習や試合を見に来ていない親御さんに、家でいろいろと言われるのはつらいと思います」と選手の気持ちを推し量る。両親のうちの1人が試合を見に来た場合は、子どものプレーを録画し、自宅に帰ってから夫婦で共有する方法を勧める。
「子どもからすると、質問するなら試合を見てほしいという気持ちだと思います。見ていないのに質問攻めされたら、反抗期のきっかけになりそうです」と辻監督。子どもとの接し方や応援の仕方次第で、保護者の存在は、モチベーションを上げる要因にもなるし、下げる要因にもなりかねない。
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