大ピンチで“痛恨被弾”と同サイン要求 監督は懸念も…小6バッテリーが抑え切れたワケ

栃木・真岡クラブに見る、学童野球に浸透する「NPBジュニア効果」
プロ球団が伝えたい思いは、確実に少年野球界に浸透している。NPBや地域リーグ球団が小学生の選抜チームを組んで戦う「NPBジュニアトーナメント」は、今年末の開催で22回目を迎える。栃木・真岡市の学童チーム「真岡クラブ」では、舘野瞬監督の息子・奏空(かなた)主将(6年)が、5年生の昨年「埼玉西武ライオンズジュニア」にサポートメンバーとして参加。約4か月間の活動で親子で得たエッセンスは、クラブの子どもたちの人間的成長や、“1プレー”にも還元されているという。
真岡クラブは昨年、全国大会「ミズノベースボールドリームカップ」で日本一に輝き(雨天のため4チーム同時優勝)、今年の同大会も予選を突破。兵庫・淡路での「1stステージ」まで勝ち上がった。「今年の選手はイケイケのタイプが多くて保護者の皆さんも熱い。それでもしっかり0点に抑えて得点に繋げる、守り勝つ野球がウチの特徴です」。チームを指導して7年になる舘野監督はそう語る。
監督が加入した当時は12人しか部員がおらず、休部寸前に追い込まれていたが、地道な勧誘が実って現在は30人前後まで増加。県内屈指の強豪にまで成長できた理由は、小学校のグラウンドを優先して使える環境や、投内連係・カットプレーなど実戦練習を多く積んできただけではない。「いいところは全部チームに持ち帰ってきた」という、親子で参加した「西武ジュニア」での経験が大きかったという。
中でも大きな土産が“言語化”の重要性だ。西武ジュニアは“獅考(しこう)力”を掲げ、勝利を目指すだけでなく、粘り強さや好奇心、他者とのコミュニケーションなどの“非認知能力”を高めることにも力を注ぐ。しかも、最終選考で親子面談を行うなど、保護者側の意識改革も促している。
そこでの学びを生かし、「小学生はただ『打ちました』『走りました』で終わってしまう子が多いですが、自分がなぜこの場面で、こういうプレーをしたかまで話ができるように促してきました」と舘野監督。繰り返し選手たちに質問を投げかけることで、思いを表現する習慣をつけさせたといい、「結果だけではなく、そこに至った過程が理解できていれば、『次はこうしよう』という改善にまでつながります」と語る。
「野球ノート」は球場の特徴まで細かく…発揮された言語化効果

言語化の鍵を握るのが「野球ノート」。これも、西武ジュニアからチームに持ち帰ってきたものだ。「西武ジュニアでは、試合をしたグラウンドの特徴まで書くんです。外野が砂だからボールが転がりやすいとか、マウンドとバックネットの距離が結構あるとか。特徴を理解していれば、次に同じ球場で試合をする時もイメージしやすいし、早めに対策もしやすくなります」(舘野監督)と絶大なメリットがあるという。
言語化効果は淡路での「ミズノドリームカップ」初戦でも発揮されていた。2点リードの最終回、2死二、三塁の大ピンチで、捕手の高山剣輔選手(6年)は2ボール2ストライクからピッチャーにウエストボールを要求し、三振に切って取った。
実は、前の大会で全く同じシチュエーションがあり、ウエストを真ん中に失投して痛恨の3ランを打たれていたという。監督としては当然、“デジャビュ”がチラつく場面だが……。
「なぜウエストを要求したの? と尋ねたら、『1球の怖さは事前に(投手に)伝えていたし、今日は腕が振れてるから投げ切ろうぜとも話をしていた。もし外れて3ボールになったら、最後はぶつけてもいいくらいの感じで“インズバ”(内角の厳しい直球)を要求しようと考えていました』と。その場面だけでなく、次のことまで想定して言葉にしてくれた。お前、よく考えているなって。成長を感じましたね」
自分の思いを言葉にして伝えられるかは、社会人になってからも重要な能力。それが、小学生のうちから養えるのなら、人生の大きな武器になるはずだ。「NPBジュニアトーナメント」が掲げる理念の1つが、子どもたちの“成長と進歩”。プロの教えが1プレーにまで波及している好例といえそうだ。
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