「1週間210球」の制限にどう対応? 120キロ左腕も急成長…全国4強学童の投手育成術

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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投手5人体制で「マクドナルド・トーナメント」を戦った船橋フェニックス

 小学生でも球数制限が当たり前の時代に、どう投手育成をしていけばいいのだろうか。8月8日〜13日に愛媛県で開催された、学童野球の日本一を争う「高円宮賜杯 第46回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で、船橋フェニックス(東京第1代表)は東京勢初の優勝はならなかったものの3位に輝いた。学童では1人「1日70球」に加えて、「1週間210球」という制限が設けられているが、その中で“超小学生級”の2投手を含めてどう戦いに臨んだのか、岡本隼人監督に聞いた。

「1週間210球」は投球過多による障害を予防するためのルールで、6日間で最大6試合を戦うマクドナルド・トーナメントや「NPBガールズトーナメント」での適用を想定して昨年10月に導入された。その中で船橋は、共に最速120キロ前後を投じ、打っても1、2番を担う右腕・森下貴斗選手と左腕・大野凌駕選手、さらに小池拓海選手、監督の息子・悠人選手ら投手5人体制で全国の舞台に臨んだ。

 210球の制限について「どう起用していくか最初はナーバスに考えていた」という岡本監督だが、1回戦(岡本→大野)、2回戦(小池→石黒信匡選手)、3回戦(小池→岡本)と継投策で勝ち上がると、最初の山場、準々決勝の北名古屋ドリームズ(愛知)戦は、森下→大野の“必勝リレー”で3-2で勝利。やはり、「小池が2、3回戦でしっかりゲームを作ってくれたことが大きかった」と振り返る。

「森下は準々決勝まで1球も投げることなく、大野も180球、岡本も130球くらい球数を残すことができた。それぞれが役割を果たして、決勝まで球数制限を気にせず戦える展開にできたのは、いい誤算でした」

 頭数を揃えられた要因として、岡本監督は「今年も全国まで100試合くらいこなしてきた」という“実戦数”を挙げる。都内の多くの学童チームと同様に専用グラウンドのない船橋は、練習環境が整わない場合は積極的に対戦相手を求めて遠征する。「僕自身も投手出身ですが、ブルペンで何球投げても、実際に打者やランナーがいて、ピンチの場面でどう抑えるかは、マウンド上でしか経験できないものだと思う」。試合の中で適性を見極め、全国の連戦を戦える柱を育成していった。

ピッチャーはメンタルを含めた「総合力が大事」

船橋フェニックスの先発の柱となった森下【写真:高橋幸司】

 象徴的なのが170センチの長身から剛速球を繰り出す大野だ。5年時に入団した当初は、球速はすでに100キロ出ていたものの制球力が課題。試合で投げられる絵は「全く見えなかった」(岡本監督)という。そこから「全国を目指して1年半がかりでやるよ」と、トレーナー資格を持つ指揮官とともに動作を改善し、マウンド経験を積み重ねることで、120キロ超のスピードで三振を奪える、ピンチの場面の“火消し役”へと成長した。

 とはいえ、能力だけでは勝ち上がれないのが全国の舞台の難しさだ。準決勝の長曽根ストロングス(大阪)戦は、頼みの森下も大野も球速100キロ台と思うようにボールが走らず、7失点を喫して敗退。「5日連続5戦目で見えない疲労があった。やっぱりピッチャーはメンタルも含めた総合力が大事」と監督。それでも、「限られた子しか経験できない舞台で、めちゃくちゃ揉まれて、今後の成長につながると思う」と労った。

準決勝は投球で苦しむも、打撃では適時二塁打を放った大野【写真:高橋幸司】

 今夏のジャイアンツカップで話題となった“両投げ”の原悠翔投手(多摩川ボーイズ)ら、多くの逸材が巣立っている船橋フェニックス。全国4強を経験した子たちは、今後どんな成長曲線を描いていくのだろうか。「小学生で全国に出られた経験は、人生ですごく大切なものになる。この大会でたくさん声援を受けたように、これからも周りから応援される選手になっていってほしい」と指揮官はエールを送っていた。

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