日本野球に多い強制指導「勝ちたい気持ちが先走る」 元プロがこだわる“対話型育成”

日米球界を経験した元楽天・森田丈武さん…茨城県内で小中学生を指導
自らが経験してきた米国流もミックスした指導で育成に尽力している。元楽天内野手の森田丈武さん(現役時代の登録名「丈武」)は現在、茨城県つくば市で野球塾「JOBU BASEBALL ACADEMY(丈武ベースボールアカデミー)」を運営。硬式野球チーム「つくばポニー」では監督を務めて小・中学生を指導している。
「厳しい言葉で叱ることはありますけど、怒らないようにしています。何も言わないのはよくない。だから感情に任せて怒るのではなく、理解しやすいように冷静に叱るんです。子どもたちが萎縮しないように、面白おかしく、冗談を交えながら言うようにはしていますね。会話も増えるし、奮起してくれるようになる」
高校卒業後はクラブチーム、社会人野球で投手と野手の両方を経験し、米国の独立リーグでもプレー。帰国後には四国アイランドリーグplusの香川で実績を積んで28歳でプロ入りした。日米での濃厚な経験を現在の指導に生かしている部分がある。
日本の指導は一般的に「強制」が多いという。「勝ちたい気持ちが先走って『こうしなさい』という感じです」。一方、米国で感じたのは「矯正」していくイメージ。「歯の矯正と同じで、きれいに整えていく。ダメな部分は『こうした方がいいかもな』と指導しながら、いい部分をどんどん伸ばしていく」と説明する。
「今は日本もアメリカも変わってきているとは思いますけど、当時の経験は今の指導に生かしています。僕はいい矯正を心がけています。甘やかすわけではないけど、子どもたちの意見を聞いて、いくつか試すんです。子どもたちの気持ちを楽にさせて、いいところを伸ばしています」
練習の強制はしないが「練習しないと自分のものにならない」と自主練習の重要性を訴えている。土日の全体練習は午後5時で終了。ナイター設備もあり「やりたい人はやりなさい」という方針だが、ほとんどの選手が9時近くまでそれぞれの課題に取り組む。
取り入れる米国流「日本も変えていかないと」

そんな中で「ボールと“お友達”になりなさい」と子どもたちに語りかける。ショートバウンドを捕球する際、顔を背けて処理しようとする選手には注意する。球を怖がらずにプレーしてほしい気持ちが強く「お友達には顔を背けるようなことはしない。お友達であるボールの顔をしっかり見て会話しなさいと言っています」という。
ゴロ捕球に関しても「卵が割れないようなイメージで」と優しくさばくように指示する。「おいでおいでという感じで捕るんです。ボールとお友達にならないと、うまくならない。言っているだけでは選手もやらないので、自分でもやって見せています」。技術を上達させるために実演してみせて、選手たちを納得させるのである。
つくばポニーには選手約60人が在籍。入部希望者は後を絶たず、練習は活気にあふれている。ただ、全体的な野球人口の減少には危機感を抱いている。「学童野球をやる子どもが減っているように感じます。そのカテゴリーをしっかり教えられる指導者が少ないのではないでしょうか」。野球の楽しさを覚える時期の学童野球に、問題が潜んでいる可能性を指摘する。
さらにプロアマを問わず、さまざまなカテゴリーの選手が一緒に練習できる中南米の野球を引き合いに「中学生と高校生が一緒に練習したり、アメリカみたいに誰が教えてもいいと思います。いつまでもプロアマ問題を引きずるのは良くない」と力を込める。
「子どもたちはどんどん成長します。日本も変えていかないといけません」。プロ入りまで苦難の道を歩んだ経験は決して無駄ではない。子どもたちの成長を手助けするため、日米で学んできた野球への取り組み方を、惜しみなく還元していく。
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