
育成に定評のあるU-12桑田真澄監督が掲げる「目的」と「目標」
野球日本代表「侍ジャパン」U-12代表の桑田真澄監督が4日、横浜市内のホテルで「第12回BFA U12アジア選手権」(8月9日開幕)に向けての結団式と記者会見に臨み、パワーとスピードを偏重する日本球界の傾向について「すごく危機だなと思っています」と警鐘を鳴らした。誰もが認める球界のレジェンドが15人のU-12代表戦士に伝えた“金言”とは……。
4月の就任以来、デジタルチャレンジ、選考合宿、強化合宿などU-12世代の選手たちを身近に接してきた桑田監督。昨季までは巨人で若手育成の分野で手腕を振るい、大勢投手らの躍進を後押しした。選手の持つ個性を輝かせる指導者として定評があり、今回U-12代表として選んだ15選手に対しても「代表に選ばれたからこそ、失敗を恐れずに挑戦する勇気を持ってほしい」と背中を押す。
今回はチームの「目的」と「目標」を設定。「目的」としては、強い人、そして強い選手になることを掲げ、「粘り強い、我慢強い、ピンチに強い、チャンスに強い……色々な意味で強い人になってほしい」と願う。「目標」に掲げるのは、U12アジア選手権で優勝してアジア王者になること、そして自分で考えて行動できる人になること。試合に勝つことはもちろん大事だが、貴重な国際大会だからこそ「海外の文化、言葉、習慣を尊重するなど、色々学んで視野を広げ、野球以外にもたくさんの収穫を得てほしい」と期待を込めた。
接する相手がプロ野球選手であれ、U-12代表選手であれ、指揮官にとって大差はない。「同じ人、同じ目線で、僕は彼らに話をするように心掛けています。ですから、小学生だけど、しっかり目的・目標、そして行動指針というものを掲げて、彼らに実践してもらいたいと思っています」と話し、子ども扱いはしない厳しさと同時に、一人の人間として深いリスペクトを示した。
パワーとスピード偏重の傾向に「野球IQが少し雑」

記者会見では終始穏やかだった桑田監督の口調が熱を帯びたのは、自身が小学生だった頃と現在の小学生の違いを質問された時だった。「僕が小さい頃よりも、やはり体格が良いと思いますね。パワーもありますし、速いボールも投げられますので、やはり時代と言いますか、すごいなという風には思ってます」と語り出したが、「ただ……」と自身が抱く懸念を明らかにした。
「ただ、今の時代の選手たち、プロ野球選手も含めてなんですけど、まあ野球IQと言いますか、野球を知る、というところが少し雑になっているんじゃないかなと、僕は思ってるんですね。日本の野球界全体が、ですね」
パワーとスピードが重視されるメジャーに倣い、最近は日本でも豪快な長打や球速160キロに迫る剛速球がもてはやされるようになってきた。桑田監督は「分かりやすく言うと、巧打を打つバッター、『巧いな』というバッターがすごく少なくなっていると思いますし、コントロールの良いピッチャーはほとんどいないですよね。ボール1球分を出し入れできるピッチャーがなかなかいない。僕はこれは日本球界のすごく危機だなと思っています」と指摘する。
「やはり日本野球の素晴らしいところは、技術力だと思うんですよね」と話すと、熱く言葉を続けた。
「やはりバッターですとボール球を振らないとか、空振りをしないとか、泳がされても人のいないところに打つとか。ピッチャーもスピードは速くないけど、しっかりとカウント球と見せ球、勝負球を投げ分けながらアウトを取っていく。目的から逆算した、そういった技術力が身に付いているのが、僕は日本選手の良いところだと思うんです。ですから、今ちょっとスピードとパワーに行き過ぎだなと思って、僕は懸念しています」
U-12世代でどんな技術を身につけるのか、どう野球脳を育てていくのかが、その後の野球人生を大きく左右しかねない。ここで会ったのも何かの縁。桑田監督はU-12代表戦士の15人に自身の考えを伝え、「しっかりと狙ったところに打てる技術と、狙ったところに投げられる技術を身につけよう」と話したという。
鉄は熱いうちに打て、ではないが、U-12世代であれば技術力や野球脳はまだまだ発達中。派手さや豪快さに目を奪われるのではなく、本当に大切なことは何かを教える好機でもある。桑田監督がU-12代表を率いる決意をした一因は、もしかしたら日本野球の行く末を危惧する想いにあるのかもしれない。
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