つらい練習優先、逆算で時間管理 女子中学生が“自走”する…ボトムアップ型チーム運営

文:吉田三鈴 / Misuzu Yoshida

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東京・練馬区の女子中学軟式野球チーム「練馬シャイン」の指導方針

 今春、日本一に輝いた佐久長聖の主力選手を輩出するなど、女子高校野球の強豪校に多くのOGを送り出している、東京・練馬区の女子中学軟式野球チーム「練馬シャイン」。現在は地元練馬区を中心に、近隣の西東京市や杉並区などから集まった24人の選手で構成されている。「全員にしっかり目が行き届き、全員が練習で十分にボールを触れる環境を維持するためには、1学年10人程度が理想」という橋本秀監督の方針のもと、3年生6人、2年生8人、1年生10人が在籍。徹底した守備重視の姿勢と、選手が自ら考えて効率的に動くボトムアップ型の活動内容について話を聞いた。

 チーム創設の2017年から指揮を執る橋本監督は、「三振は相手がいることなので、一概にミスとはいえない部分も多い。しかし、送球や走塁のミスは自分たちで直せること。だから守備練習が大切。目指す理想は1点で勝てるチームです」と指導方針を語る。

 守備と走塁は自分たちの習熟度によって確実性を高められる領域と考え、ノックや連係プレー、細かな牽制のタイミングといった守備の反復練習に時間を割く。しかし単調になりがちな反復練習で集中力を維持させるのは容易ではない。そこで、選手を飽きさせないための緻密な工夫を凝らしている。

 例えば、監督が選手を急かす光景は見られない代わりに徹底されているのが、選手自身による時間管理だ。「午後1時からバッティング練習」と決まれば、その5分前には準備を完了させ、1時ジャストには最初の一球が投じられる状態を作り出す。監督・コーチの指示を待つのではなく、開始時間に間に合わせるために何をすべきか、選手同士で声を掛け合いながら逆算して行動しているのだ。

「早く」「急げ」の声掛けよりも、時間で動く仕組みを徹底

つらい練習から楽しい練習へとメニューにも工夫を凝らす【写真:吉田三鈴】

 メニューは、体力的・精神的に負荷の高い「つらい練習」を先に行い、実戦的で「楽しい練習」を後に配置する構成をとる。「これが終われば、楽しいご褒美がある」ことを明確に示し、厳しい反復練習に対する集中力を維持させる。また、疲労がピークに達する後半にこそ「楽しさ」を持ち込むことで、試合終盤の苦境においても前向きなエネルギーを維持できる効果も期待できるようだ。

「守備はとにかく反復練習が最も効果的だと思いますが、同じことばかりでは飽きてしまいます。そのため、できるだけメリハリをつけたいという意図があります。選手は、バッティング練習が大好きですので、その前にきつめの守備練習や走塁…という組み立てはよく行っていますね」(橋本監督)

 1日練習の日の午前中は10時30分から補食の時間が設けられている。「自分の体を作るのは、自分の選択」として、持ち寄るメニューはおにぎりやバナナ、ゼリー飲料など個々で異なるが、その時間は練習での雰囲気とはまるで異なり、学年を超えた選手同士の笑いの絶えない和やかな空間に変わる。しかし30分経過すると、誰からともなく片付け始め、体を動かす準備に入っていく。緩急をつけた時間の使い方の上手さと、変わり身の速さに見ているこちらが思わず感心するほどだった。

補食から練習へ、緩急をつけた時間の使い方も特徴的【写真:吉田三鈴】

 季節によって練習メニューに変化をもたせることも忘れない。冬は打撃練習に竹バットを使用。金属バットとは違って芯を外すと手に強烈な振動が伝わり、打球も飛ばない。ごまかしの効かない道具を使うことで、選手たちは自然とバットを最短距離で出すスイングと、正確なコンタクト能力を身につけていく。

 一方で夏は、一日中炎天下で活動することは女子中学生の体に極めてリスクが高い。そこで午前中に野球の練習を行ったのち、午後はプールへ移動し、1000メートルのウォーキングによる全身運動を行っている。厳しい午前の練習を乗り越えた先に待つプールでの時間は、選手の精神的な解放感を生み、チーム全体の活気を維持する原動力にもなっている。

勝利の先にあるのは、「自立」という目標

「一人一人が意思をもって行動できる大人に」と橋本秀監督【写真:チーム提供】

 練馬シャインの取り組みは、確実性を高める「練習に対する時間配分」、メニューの組み立てによる「集中力の維持」、そしてリラックスをしながら「体を鍛える」というそれぞれ目的が確立されている。橋本監督やコーチたちが細かく指示を出さずとも、選手たち自ら状況を判断し、勝利への最適解を導き出そう努力する。そんな自走するチームの完成を目指していることがわかる。

「選手たちは全国大会への出場や、もっと試合に勝ちたい、強くなりたいというチームとしての目標がありますが、監督である僕自身は、選手一人一人が自らの意思をもって行動できる大人に成長してもらうことが目標です」

 橋本監督が語るその言葉どおり、グラウンドで白球を追うだけではなく、周囲の様子や時計を見ながら次の行動を予測し、自ら考えて動く選手たちの姿は、野球の技術以上に自立した大人への成長を期待させてくれた。

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