学童野球の指導者は「人気商売」 未経験でもOK…低学年を惹き付ける“魅力の本質”

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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東京・町田玉川学園少年野球クラブ代表に聞く…低学年が夢中になる指導

 低学年の指導には、工夫と“魅力”が不可欠だ。東京・町田市の学童野球チーム「町田玉川学園少年野球クラブ」(以下、町田玉川)は、“プロの登竜門”NPBジュニアに過去11人を輩出するなど、低学年のうちから将来を見据えた育成に定評がある。監督兼代表を務める菊池拓平さんは、「野球を知らなくても学童野球のコーチは務まります」と語るが、小さな子を惹き付け、技術向上に繋がる練習メニューや、指導者の資質について聞いた。

「高校や大学で野球を満喫できる選手の育成」を掲げる町田玉川では現在、保護者コーチら14人の指導者が教えている。小学2年生(新3年生)以下は20人が所属するが、菊池代表は低学年指導について、「道具を扱うスポーツなので、やはり、ボールやバットに触れる機会をできるだけ作ること。人数が多くても(触れる回数が)変わらないようにすることが大事」と説明。成長度合いの差が大きい世代のため、可能ならばレベルの近い同士でグループ分けをし、競い合えるようにできるのが理想だという。

 低学年の難しさといえば、やはり集中力が続かないこと。長くても1メニュー30分が限度だろう。その中で豊富なドリルを用意し、飽きない工夫がいかにできるか。「子ども受けがあって、程よい難易度で達成感が得られるもの」がメニューとしてお勧めだという。

 例えば、チームで行っているのが「カラーバット投げ」だ。文字通り、通常のバッティングのようにプラスチックのカラーバットを振り、前方向へ真っすぐ遠くに飛ばすもので、理想のスイング軌道や打球角度が身に付いてくるという。

「バッティングの本質は筋肉をつけてガツンと打つのではない。仕事をするのは筋肉ではなくバットであることが理想だと思っています。メジャーリーグを見ていると、割とバットを飛ばしてしまう打者がいますよね。そこまでギュッと握っていない。下半身から体の芯が動いていき、脱力した手からバットがポーンと放たれるのが一番いい形」

 強い打球を打とうとすると、どうしても上半身や腕に力が入ってしまう。だからこそ下半身への意識が大事なのだが、低学年に伝えるのは難しい。遊び感覚で、仲間と盛り上がりながらできるドリルならば、将来に生きる技術が楽しく身につけられるというわけだ。

指導者の“魅力”を生むのは「普段からの無駄話」

町田玉川学園少年野球クラブ・菊池拓平代表兼監督【写真:磯田健太郎】

 もちろん、練習メニューだけでなく教える側の大人の存在も重要だ。「機械が相手だったら子どもたちもあっという間に飽きるでしょう。どうやって振り向かせられるかが腕の見せどころ」。つまり、その練習の時間、指導者自身に集中してもらえる“魅力”があるかが大切だという。

 その“魅力”とは、単に笑いを取れるとか、優しさとかで生まれるものではない。菊池代表自身が心がけているのは、練習の前後や合間にする「普段からの無駄話」だ。

「接点がないのに、いきなりボールを転がされて『捕れ』と言われても親近感が湧かないじゃないですか。『昨日、鬼滅(の刃)を見に行ったんだ』とかでもいい。ある程度無駄話もできる、“近しい存在”と思ってもらえることが大事です」

 普段からの接点があるからこそ、時に厳しいことを言っても子どもたちに伝わる。自身の息子や娘が野球を始めたのを機に、野球未経験者がパパコーチになることはあるが、菊池代表は知識がなくても十分に教えられると語る。

「多賀(少年野球クラブ)の辻(正人)監督が典型ですが、学童野球の指導者は“人気商売”。その人に“魅力”があれば務まります」。子どもたちの心を吸い寄せ、“自分の空間”を作るコツは、ちょっとした心がけから生まれる。

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