9人に満たない部員数…中学野球の“危機”に動いた名将 「クラブ化」で生まれたメリット

更新日:2025.12.11

文:橋本健吾 / Kengo Hashimoto

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11月に富山で誕生した中学軟式チーム「All Toyama baseball academy」

 公立中学校の部活動の“地域移行”は、思った以上に難航している。指導者や部員数の確保に四苦八苦する中、富山県で11月に発足したのが中学軟式チーム「All Toyama baseball academy」だ。子どもたちが思い切り野球ができる環境を作った総監督の田村剛さん(氷見西條中)は「富山の野球レベルを下げてはいけいない」と危機感を抱き、新体制のスタートを切った。

 クラブ化を決めたのは、思い切り野球ができる環境を子どもたちに届けたい一心だった。氷見市は昔から野球が盛んで、特に中学軟式は全国大会で好成績を残していた。だが、昨今の少子化やスポーツの多様化などもあり、部活動に携わる生徒は年々減少。さらに、部活動を地域のクラブや民間事業者などに委ねる「地域移行」が難航していることも、子どもたちの「分散」を招いているという。

 かつては学校単位で40人程の部員が在籍。大会への出場も可能だったが、現在は9人に満たない学校も珍しくない。試合はもちろん、練習もままならない状況だ。

 市町村により地域移行への“熱量”の差は著しく、氷見市は他の自治体に比べると後れを取っている。部活動では試合ができる人数が揃わず、野球をやりたい子どもたちは他地区のクラブチームに入部。これまで氷見の球児を育て高校球界に送り出してきた田村さんは、こうした危機的状況に居ても立っても居られなくなった。

田村総監督が抱いたもどかしい思い「かわいそうな代が生まれることになる」

All Toyama baseball academy・田村剛総監督【写真:橋本健吾】

「氷見の子が思い切り野球ができる環境がなく、他地区に行ってしまうことにもどかしい気持ちがありました。人数が少ないと、やりたい練習や試合もできない。それではうまくなれません。早く手を打たないと、かわいそうな代が生まれることになります」

 氷見市には5つの中学があるが、1校は募集停止となり2校は部員が9人未満。中学校単位で野球ができず、合同チームでの活動を強いられる状況だ。そこで、11月に氷見西條中、北部中、射水市の大門中の3校による軟式チーム「All Toyama baseball academy」を設立した。地区の制限は設けず、野球をやりたい子どもたちは全て受け入れている。現在の部員数は29人で、公式戦にも出場できるようになった。

 田村さんは氷見高OBで、氷見市内の中学校で30年間に渡って指導を続ける中学軟式野球の名将。氷見北部中を県5連覇、全国大会3位に導いた実績を持つ。チームの代表を務める高橋拓己さんは「クラブチーム化を実現させるには田村総監督の力が必要でした。政府が進める地域移行は遅かれ早かれ訪れること。富山の野球界をここまで考えている人はいません」と語り、“一心同体”でチーム作りを進めている。

 高橋さんはチームのスポンサー企業を集めることにも力を入れた。「子どもたちが少しでも野球に触れる機会が増えてほしい」。金銭的な問題を理由に野球を断念せざるを得ない子どもや家族を支援するため、地元企業などを訪れ多くの賛同を得たという。

 田村さんの指導論は昔から変わらない。「野球を好きになり、できるだけ長くプレーできる球児を育てる。その子が大人になり、子どもたちを育てていく。それが富山の野球レベルを上げていくことに繋がる」。部活動廃止を経て、クラブ化へ。子どもたちが野球を続けられる環境を整えていくことが大人の役目になるはずだ。

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