負けた直後に勝者と交流? 監督発言は厳禁…“小学生の甲子園”で初実施の「AMF」とは

文:吉田三鈴 / Misuzu Yoshida

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試合後の両軍交流「アフターマッチファンクション」を全日本学童軟式野球大会で実施

“真剣勝負”が繰り広げられる小学生の全国大会で、画期的な取り組みが導入される。全日本軟式野球連盟では今年から、試合後に両チームの選手同士で戦いを振り返り、交流する「アフターマッチファンクション」(以下、AMF)を、“小学生の甲子園”「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント」(8月11日~17日、新潟県)で導入する。スポーツマンシップの醸成と、子どもの自主性を育むための試みを、全国大会で行う意図とは。同連盟事務局長を務める吉岡大輔さんに話を聞いた。

 AMFとは元々ラグビーに根付いた試合後の交流文化で、全軟連では、子どもの学び合いとリスペクトを深める活動の一環として、2023年から小学生女子の全国大会「NPBガールズトーナメント」で導入している。今年はそれを男子の大会にも広げ、マクドナルド・トーナメントでは準々決勝以降の7試合で実施。また、スポーツ少年団の学童を対象とした全国規模の交流大会「エンジョイ!軟式野球フェスティバル」(旧・全国スポーツ少年団軟式野球交流大会、日本スポーツ協会主催)でも実施が決定している。

 AMFの基本的な流れは、試合終了後にJSPO(日本スポーツ協会)公認コーチ3の資格を持つ指導者が、ファシリテーター(進行役)となって主旨説明を行い、両チームの選手が5~8人程度の小グループに分かれてグループトークを実施。その内容を全体の前で発表する。最後に両チームの主将が挨拶をし、全員で集合写真を撮影。ファシリテーターを含む3人の運営スタッフで約20分を目安に進行され、その間、両チームの監督・コーチの発言は一切禁止となる。

「試合を勝ち負けだけで判断するのではなく、価値観の異なる相手と互いに認め合うことで、子ども自身の人間力や主体性の育成につながります。目の前で負けて悲しむ相手への接し方、思いやりの心をはぐくみ、他チームから試合内容のフィードバックやアドバイス、時には称賛を受けることで、新しい気づきや発見もあるはずです」。吉岡さんは、全国の舞台でAMFを実施する意図を、そう説明する。

「相手チームから“あのプレーを真似したい”なんて言われたら、一生もの。好きな野球を通じて仲間が増え、野球人として成長した何年か後に、“あのときAMFで一緒だった……!”というドラマがあったら、最高ですよね」

「NPBガールズトーナメント」での実施は今年で3年目になるが、女子小学生は意見交換が活発で、連絡先の交換も意欲的など交流が盛んになる傾向がある。それが、男子小学生だとどうか。積極的に発言する子がいるかどうかで左右されるケースもありそうだ。

 それでも、「AMFは運営マニュアルはあるものの、モデルケースやこれが正解というものは存在しません。仮に盛り上がらなくても問題はなし。それが子どもたちのありのままの反応として大人はとらえてほしい」と吉岡さんは語る。

AMFは子どもだけでなく、大人にも発見をもたらす

仕切り役以外の指導者・保護者ら大人は周りで見守る【写真:全軟連提供】

 全国大会の場で、試合後交流をする必要があるのかという意見も当然ある。これまでのAMFの活動でも、「負けた直後に相手チームと笑顔で話し合うのは難しい」という声があったり、シビアな上位の試合(準決勝、決勝)になるほど参加への抵抗感が増したりと、一筋縄ではいかない場面があった。

 それでも「子どもたちのせっかくの交流機会を奪わないでほしい」と根気強く説得してきた結果、参加者や関係者からは「もっと交流時間を長くしてほしい」「子どもたちがこんなことを考えていたとは」「貴重な経験だった」といった好意的な声が、回を重ねるごとに増えていった。中には、「チームで反省会をしようと思ったけれど、(AMFがあるお陰で)不要になった」と監督から感謝されたこともあったという。

 吉岡さんは、AMFは子どもだけでなく、大人にも発見をもたらすと強調する。「進行役を務める方の中には、AMFの目的を明確にするために紙芝居形式で概要を説明される方や、開始前に参加者全員の一体感を出すために輪になって手をつなぎ、目を瞑って試合を思い出してもらうなどのアクションを入れる方もいます」。少しの勇気と、子どもをしっかり見守る目があれば、誰もができる役割。だからこそ、多くの野球指導者にAMFの存在を知ってもらい、進行役も経験してもらいたいと願っている。

「今年のマクドナルド・トーナメントの進行役は新潟県在住の指導者を中心に、NPBガールズトーナメントは(開催地の)岡山県と中国エリア在住の指導者からそれぞれ立候補制で、『エンジョイ!軟式野球フェスティバル』は、東海エリア在住の指導者を中心にお声がけしました」。いずれも多くの希望者が集まったといい、ゼロベースで始まったこの活動への賛同者が少しずつ増えていることに「感謝しかありません」と吉岡さんは話す。

「全国大会でAMFを経験された指導者の皆さんは、それを各地域に持ち帰っていただき、普段の練習試合に行うなど、どんどんこの活動の輪を広げてもらえたら嬉しいですね」

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