「低めを振るな」の禁止句指導は適切か 元プロ監督が“逃げ道”を大切にするワケ

文:真田一平 / Ippei Sanada

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広島ジュニア・天谷宗一郎監督が小学生指導で大切にする石井琢朗コーチの教え

 現役時代にコーチから教わった“助言”を今でも忘れない。26日に開催する「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024 ~第20回記念大会~」で広島東洋カープジュニアの指揮を執る天谷宗一郎監督は、監督として4回目の大会に挑む。広島で17年間、俊足巧打の外野手として活躍した指揮官が、小学生を指導するうえで心がけているのは「逃げ道を与える」アプローチだ。

 この指導方針は、2012年から6年間、広島でコーチを務め、球団史上初のリーグ3連覇を支えた石井琢朗コーチ(現DeNA野手コーチ)の教えでもある。選手に“逃げ道を与える”とはどういうことか。天谷監督は「選手のマインドを変えること」と話す。

「現役時代、『低めの球を振るな』と言われて難しかった経験があります。同じ指示を与えるなら、低めを振るなではなく、『高めを振っていこう』と言われると、選手はアクションを起こしやすいと思います。これは琢朗さんから学んだ考え方で、指導する際は常に意識しています」

 禁止を示す“するな”と、アクションを促す“やっていこう”とでは、求めることは同じでも選手の意識は変わってくる。言葉のアレンジ次第で伝わり方に大きな違いが出ることを天谷監督は自身の経験から学んだ。「理不尽な指導はしないと決めています。なぜこの練習をするのか、丁寧に伝えることで選手の取り組み方も変わってくると思いますし、監督を経験させてもらうたびに、その部分を大切にするようになりました」。

20年目で“広島初”の取り組み、中国5県に対象拡大

大舞台に挑む広島ジュニアの選手たち【写真:広島ジュニア提供】

 広島ジュニアの監督として、これまで様々な選手を見てきたが、伸びる選手には“共通点”があると感じている。「オンとオフの切り替えがうまく、目的意識を持っている選手は、大会を通じて成長している印象があります」。成長段階が個々で異なる小学生とはいえ、ポテンシャル以上のものを身に付けるには“考える力”が必要になる。

「僕自身が目標を明確にせずに成長していったタイプなので、良いのか悪いのかを判断する基準が自分でも分からないことがありました。その苦い経験があるので、反面教師ではないですが、選手には考えてプレーすることが大事だと伝えています。あとは気持ちの切り替え。伸びる子は勉強と遊び、野球の切り替えがすごくうまいです」

 広島ジュニアの選考では、今年から新たな取り組みが実施された。昨年までは広島県内の選手のみでチームをつくることにこだわってきた。20回目を迎えるジュニアトーナメントに臨むにあたり、中国地方5県に選考対象を広げ、今年のチームには岡山県と山口県の選手が名を連ねている。

「僕がプロ野球球団のない福井県出身ということもあり、他県の選手にもチャンスが広がったのはうれしいですし、良い取り組みだと思います」と天谷監督も力を込める。監督として迎える4回目の舞台、チーム結成以降、成長を続ける16人の選手と共に頂点を目指す。

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