「中学生は発展途上、色々な動きを身につけることが野球に繋がる」

 土日と祝日に静岡県東部を中心に活動しているチームを初年度から指揮する岩見監督は「フィジカルが強くならないと技術は上がっていきません」と説く。特に、冬場はトレーニングを重視している。だが、飽きがくる腹筋、背筋、ウエートトレーニングを中学生が継続するのはなかなか難しい。また、体の動きのバリエーションを増やすには、野球以外の競技を取り入れることが効果的と考えている。野球以外のスポーツ、さらには綱引き、縄跳び、受け身を練習メニューに入れる時もあるという。

「両手、両足をバランス良く使う運動、後ろ向きの動きや回転は野球の守備に通ずる部分があります。中学生はまだまだ発展途上なので、色々な動きを身に付けることが結果的に野球に繋がると思っています。野球以外の競技や遊びをすると、体の動きをイメージしたりコツを考えたりするので、考える力も身に付きます」

 岩見監督は練習中に細かく指示を出さない。頻繁に飛ぶ声は「理解していないなら練習はやめよう」。1時間半のウォーミングアップとトレーニングメニューも選手がつくったものに手を加え、普段から考える習慣がつくように心掛けている。プレーするのは選手であり、試合中の判断も選手がするためだ。

 新チームは全国大会連覇を目指す。ライバルたちからは王者としてみられるが、成岡妃紗良(なるおか・きさら)主将は「昨年優勝できたのは3年生のおかげで、今のチームは声も出ていないし、まだまだ技術も高くないです。主将としてチームメートを引っ張っていかないと勝てないと思います」と自己評価は厳しい。同じ2年生の星谷佳穂(ほしや・かほ)外野手も「新チームは強いとは言えません。技術を上げるだけではなくて、挨拶や準備など当たり前のことをチーム全体でできるようにしたいと思います」と危機感を滲ませる。全国の厳しさを知っているからこそ、慢心は生まれない。

 成長著しい時期に野球の技術を最大限に伸ばす練習の工夫。3年に満たない期間で選手が入れ替わる中学野球で、10年間に3度も全国の頂点に立つ強さには理由がある。

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