中学生の障害リスクに関わる“骨の線” 日本一強豪実践…成長期に適した「下半身強化」

文:喜岡桜 / Sakura Kioka

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医療従事者がそろう「ポニー筑後リバーズ」指導陣…鍵は骨端線への刺激

 成長過程にある子どもの体組織は、とてもデリケートだ。福岡県八女市にある筑水会病院で勤務しながら中学硬式野球チーム「ポニー筑後リバーズ」で指揮を執り、今年9月の「2ndエイジェックカップ」で日本一へと導いた入部英徳監督は、選手が躍動した要因の1つに、骨端線などに配慮した指導があると明かす。First-Pitchでは小学生・中学生世代で日本一を成し遂げた監督に取材。中学生の体づくりでの注意点を聞いた。

 骨端線とは、成長期にだけ見られる、骨の両端に位置する成長軟骨帯のこと。ここで組織の破壊と生成が繰り返されることで、骨は伸びたり太くなったりする。そして、運動などで刺激を受けると骨内の血流がより活発になり、成長が促される。だが、逆に負荷がかかりすぎると身長が伸びづらくなったり、痛みが生じたりするなどの危険性がある。

「体づくりといえば、器具を使ったスクワットとかレッグカールとかで高負荷をかけたいところですが、そんな“大人目線”をグッと抑えて、まだ骨端線が閉じていない子どもたちはランメニューで下半身を鍛えるようにしています。過度な負荷をかけると、怪我だけじゃなく、シンスプリント(脛の痛み)などのスポーツ障害を引き起こしてしまいますから」

 みやま市にあるグラウンド周辺は山道が多くあることから、週末の午前中はさまざまな傾斜の坂や階段を使ってランニングをする。「下りは膝などの関節に負荷がかかり、転倒のリスクもありますから、すべて上りにしています」。看護師や理学療法士の顔をもつコーチ陣とともに選手たちの様子を観察し、疲労度に合わせて走る量を調整している。

注意したい成長期のストレッチ…大人のサポートで痛めてしまう場合も

ポニー筑後リバーズの入部英徳監督【写真:編集部】

 入部監督は、運動量の調整と共に、「靱帯や腱などを痛めないように気を付けるべき」と説く。股関節の柔軟性を高めるために、3種類の「股割りストレッチ」を練習中に最低5回は実施。足を左右に開いて腰を落とす一般的なものと、足を前後に開いたり、片足ずつ内転筋を意識しながら行ったりする。ストレッチをするときに注意したいのが、“痛み”との向き合い方だという。

「骨端線によって骨が伸びるわけですが、その骨や筋肉に付いている靱帯や腱は、同じスピードでは伸びないそうです。そこで過度に伸ばすと相当な痛みが走る。成長期の子どもにとって、ストレッチは“痛いもの”。そのときに『ちゃんとやりなさい!』と大人が無理に手でサポートしたりすると、靱帯や腱を痛めてしまうことにもなります」

 そのため同チームでは、選手たちが痛みを理由に“手抜き”をしていないか注意しつつ、「無理のない範囲でしっかり伸ばすこと」が大事だと指導している。

 すでに20人以上のOBが高校進学後に甲子園出場を果たしている。今夏も西日本短大付のベンチメンバーの多くが卒団生だった。入部監督は、今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定。次のステージでも力を発揮できる、中学生年代の体づくりについても披露してくれる。

中学硬式野球日本一…ポニー筑後リバーズの指導・練習法を紹介!

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