中学硬式野球・江東ライオンズは俊足が伝統…走力向上は「技術と筋力と心構え」
走力は時として長打力不足を補って余りある貴重な武器になる。中学硬式野球のポニーリーグに所属する「江東ライオンズ」(東京・江東区)は、1976年の創部時から足が速い選手がそろうのが伝統だ。First-Pitchでは小学生・中学生世代で日本一を成し遂げた指導者に取材。2021年秋からチームを率いる田本剛監督に、選手たちの脚力を引き上げるコツを聞いた。
田本監督は、コーチから監督に就任した1年目の2022年、江東ライオンズを全日本選手権3連覇へと導いた。チームの特徴について「足には自信があります」と即答する。
「江東ライオンズは、伝統的に足が速いことが特徴です。そこはどのチームにも負けるつもりはありません」
チームのOBでもある田本監督は、同じくOBで、阪神で活躍した荒木郁也さんと同期。現役時代の3年生の春先から荒木さんに代わり1番を任されたが、足の速さでは到底かなわなかったという。
「隣で走ったことがありますが、3歩走ったら体1つ分くらい差がつくんです。私も中学の時は50メートルを6秒6ぐらいで走っていましたが、荒木は6秒2から6秒1、もしくは6秒フラットくらいで走っていたんじゃないでしょうか」
「自分は足が速い」とまずは錯覚させることが大切
監督となった今も、しっかりと伝統を引き継いでいる。スポーツトレーナーの経験もあり、体の仕組みやメカニズムを熟知しているだけに、「足は10人いたら10人速くすることはできます」と断言する。
「走るのはセンスじゃありません。過去には50メートル8秒7で入ってきた子を6秒8まで引き上げたことがあります。現代野球では、足の遅い子が単打で一塁走者にいたらサインを出すことは難しいです。打率が3割の子の長打率は5分から1割下がります。10打席立たせて2割の長打にかけるのか、それとも単打を二塁打にできるような走力を持たすのか。指導者があきらめなければ、足は絶対に速くなります」
足を速くする上で大切なのは「技術と筋力と心構え」だという。技術的な部分は、手の振り方、足の使い方などのフォーム的な部分や、「最後までセーフになる可能性を探る」ベースランニング。筋力的な部分は、上半身と下半身がスムーズに連動できるよう、体幹を中心としたトレーニング。シーズンオフは土曜をトレーニング、日曜を走り込みに充て、一冬を越える頃には、体つきがガラリと変わる。
「お尻、ふくらはぎ、ハムストリングス(太もも裏)が発達してくるので、後ろから見る下半身のシルエットが全く違ってきます。1歩目の瞬発力がつくので、守備にも生きてきます」
そして一番重要なのが「心構え」だ。いくら指導者が技術やトレーニング方法を伝えても、当の本人が遅いと思い込んでいれば、走力が上がることはない。まずは「自分は足が速い」と錯覚させるところから始める。
「選手たちによく言うことが2つあります。1つは、自分から足が遅いような走塁やリードをしたら負けだということ。もう1つは、足が速くなれば、間違いなく野球の世界観が変わるということ。走塁では次の塁をうかがえるし、守備で追いつけなかった打球に届くようになる。『今のままとどっちがいい?』と問いかけると、必要な練習をやるようになります」
今年のレギュラーは、投手を除く8人中7人が50メートル6秒台、うち4人が6秒5以下を叩き出したという。田本監督は今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定。上のステージでも通用する走力アップの秘訣を披露する。
全国3連覇の実績…江東ライオンズの指導・練習法を紹介!
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