
中南米の野球を経験…谷口容基さんが説明する“横手送球”のメリット
“美しいフォーム”を追い求める必要はない。ドミニカ共和国など海外でのプレー経験が豊富な谷口容基さんは現在、関西を拠点にオンライン野球教室「DREAM SCHOOL」などで小中高生から大学、独立リーグの選手まで幅広く指導している。異国での経験を落とし込んだ柔軟な指導法で選手の個性を生かし、技術を伸ばしている。
野球教室で、谷口さんは送球フォームを矯正したいという相談を受けたことがある。「横から投げるのを何とかしたいと言ってきたんです」。その選手は腕が下がって投手のサイドスローのような投げ方で、真上から振り下ろすフォームに変更したい考えを伝えてきた。
谷口さんは、いくつか確認した。まずは球筋。現在のフォームで真っすぐ投げられており、送球自体に問題はない。次に、今の投げ方で痛みや違和感を覚えたことがあるのか質問。「全くないです」との答えを受け、「それなら今のままでいいんじゃないですか」と言い、交流がある超一流メジャーリーガーの名前を出して理由を説明した。
ヤンキースやマリナーズなどで活躍した、ドミニカ共和国出身のロビンソン・カノ内野手だ。メジャー通算335本塁打、2639安打をマークした強打者は二塁の守備も絶品で、ゴールドグラブ賞を2度受賞している。谷口さんが「カノは上からは絶対に投げません」と言うように、捕球後は素早く横から、時には下から送球。強く、正確なスローイングができていた。
「投げ方にもいろんなやり方がある。カノはキャッチボールの時から、下から投げています。普段、下から投げているから、体勢が悪くなってもメッチャいい球を投げられる。きれいな投げ方をしている子は、体勢が崩れて上から投げられない状態になると、うまく投げられないことが多くなる」
「上から投げるのが必ずしも正解とは限りません」

例えばスライディングしながら捕球した時など正面以外の打球や、イレギュラーで体勢が崩れた際は、無理に上から投げるよりも下や横から投げた方が正確に届く可能性が出てくる。走者が一塁にいるケースで二遊間に打球が飛び、遊撃手や二塁手がゴロを捕球した後に二塁へ送球する際、下や横から投げる選手は多い。上から投げるより早いという理由もある。
同様に三塁や遊撃、二塁から一塁への送球でも、横から投げて構わない。「上から投げるのが必ずしも正解とは限りません。僕は『横から投げるままでいいんじゃない』と伝えました」。今まで上から投げなければいけないと思い込んでいたその選手は「そんなこと思ったこともなかったです。初めてそんな考えを言われました」と驚きつつ、納得したという。
「送球は、アウトにするのが目的です。フィギュアスケートのような加点式じゃないので、一般的に正しいとされるフォームで、きれいに投げる必要はありません」
体に負担がかかっていないのであれば、投げやすいフォームを続けるのが最善で、正確に送球できる確率も高まる。「迷いを緩和してあげる。不安をなくしてあげることも意識しています」。身体能力が高いメジャーリーガーだからできるのではない。下手や横手からの送球も、理にかなっているのである。
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