子どもに必須は「再現より100回の違う動き」 元プロ推奨、“多様性”付く送球ドリル

公開日:2024.04.07

文:間淳 / Jun Aida

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日本ハムや阪神でプレー…田中聡氏が力説「ひらがなを1万回練習しても漢字は書けない」

 引き出しの数が将来へとつながる。日本ハムや阪神でプレーし、現在は園児から社会人まで幅広く指導している田中聡さんは、ジュニア期に動きのバリエーションを増やす大切さを説く。運営する野球スクールでは、ベアハンドやサイドスローの習得など多種多様なメニューを組んでいる。

 田中さんは香川・尽誠学園で1993年春の選抜の出場し、法大、米国の独立リーグを経て日本ハムと阪神でプレーした。2003年に現役を退いてからは野球の指導やマネジメントに携わり、ジュニアの指導歴は15年を超える。現在は東京・羽村市で野球スクール「HERO-S」を運営。運動能力が伸びるジュニア世代に対して、引き出しを増やす指導に重点を置いている。

「小・中学生の頃にいろんな動きを経験するかどうかで、その後に間違いなく差が出ます。成長期は動きのバリエーションを増やして、運動神経を高めることを前提に指導しています。守備位置を固定するのは体の成長が止まった段階でよいと思っています」

 野球に必要な動きを習得するには、経験と練習が不可欠と田中さんは強調する。小学生を中心に指導する野球スクールでは、投げ方、捕り方、打ち方の全てで想定されるあらゆる形を教えている。

 例えば、内野手に必要なスローイングドリルには、素手で捕球してそのまま送球するベアハンドや、体を傾けたまま送球するサイドスローなどもある。スクールに通う子どもの保護者には、「ひらがなを1万回書いたら、漢字を書けるようになりますか? 絶対に書けません。スポーツも同じで、経験しないとできないんです」と伝えているという。

引き出しを増やすには経験が不可欠…守備位置固定せず多くの動きを

野球スクール「HERO-S」を運営する田中聡さん【写真:間淳】

 ダブルハンドの練習だけをしている選手が、いきなりバックハンドで捕球できるようにはならない。バックトスやジャンピングスローも練習して初めて身に付く。プレーの引き出しを増やすには経験が不可欠になる。田中さんは選手が動きのバリエーションを増やせるように、守備位置を固定せず、より多くの動きを経験させている。

「プロ野球選手は再現率を上げるために努力しています。投手であれば、100球全てを狙ったところに投げることを目指して数をこなします。ただ、1回できることを100回連続でできるようにする努力は、小学生に必要ありません。100回違うことをやった方が、その先のステージに生きます。プロとジュニアでは努力の目的が違います」

 特定の練習や守備位置だけを課せば、そのために必要な動きやプレーは習得できる。ただ、成長途中の小・中学生の可能性を狭める指導になる恐れもある。

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