【少年野球】フライの正しい捕り方 専門家推奨…苦手意識をなくすポイント
初心者の小学生でも、強豪チームの中学生でも、苦手意識を持つプレーのひとつが「フライ捕球」です。どう追いかけて、どのような体勢で捕るのがいいのか。指導者としては、技術的な部分はもちろん、特に小さい子どもに対して「硬いボールが落ちてくる」という恐怖感も解消してあげなければいけません。上手く教えるのは難しいようにも思えますが、要点を押さえて指導することで、苦手意識を克服することは可能です。
育成世代の課題解決をサポートする「First-Pitch」では、“指導のプロ”に独自取材。高校球児からプロ野球選手まで幅広くトレーニングのサポートをしている東京農業大学の勝亦陽一教授に上達のポイントを聞きました。さらに全国大会で2度の優勝経験のある「静岡裾野リトルシニア」の佐藤裕徳監督には、現場レベルでの実際の指導法を教えてもらいました。
目次
専門家プロフィール
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○勝亦陽一(かつまた・よういち)1979年5月13日生まれ、静岡県出身。小学4年から野球を始め、早大では硬式野球部でプレー。早大大学院スポーツ科学研究科修了。2022年4月から東京農業大学応用生物科学部教授。各カテゴリーに必要なトレーニングや育成方法に関する研究をしている。First-Pitchと連動している野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT(ターニングポイント)」でも、育成年代の野球指導に向けたトレーニング方法や理論を解説。
専門家プロフィール
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○佐藤裕徳(さとう・ひろのり)1972年12月5日生まれ、静岡県出身。小学4年から野球を始め、中学では東京の深川ポニー、高校は日大三高でプレー。2013年に静岡裾野リトルシニアのヘッドコーチとなり、2022年1月に監督就任。2018年にチームを2度目のシニア日本一に導いている。
1.なぜフライを捕るのは難しい?
まずは、フライ捕球についての基礎を学んでいきましょう。なぜ多くの子どもたちが「飛球を捕るのが苦手」なのでしょうか。
落下点の予測
高く舞い上がり落ちてくるボールに対し、すぐに距離感をつかめて落下地点を予測できる子どもは、ほんの一握り。多くの子は、追いつけるはずの打球に間に合わなかったり、ボールを見失ってしまったりで、それが苦手意識に結びついてしまいます。
グラブの位置
キャッチする際、グラブをどの位置に構えるかも大切です。ボールが当たるのが怖いからと、顔を覆うように構えていては、当然視界が遮られて、打球の行方を見失ってしまいます。逆に、グラブと顔が離れすぎていても、距離感がつかめずにミスをすることにつながります。
捕球姿勢
速さや高さ、方向など様々なフライに対応しなければならない中で、どんな体勢でもいいから捕ることができればいいとは限りません。“捕って終わり”というケースばかりではなく、外野手ならば内野への送球など、素早く次のプレーに備える必要もあります。
2.少年野球で習得させたいフライの捕り方
フライ捕球の悩みを解消するために、取り組める工夫があります。勝亦教授のアドバイスを含め、いくつか紹介していきましょう。
「顔の前で捕る」は間違い
少年野球の現場では「顔の前でボールを捕れ」という指導を見かけることがあります。しかし、それだと前述のように、グラブでボールが見えず、打球との距離感をつかめなかったり、ボールを見失ってしまったりする危険性があります。また、顎が上がって“バンザイ”(打球を後ろに逸らす)もしやすくなります。
そうしたリスクを避けるためにも、グラブは顔の正面ではなく、やや斜め前に構えることがポイント。これならば自然に打球を“横から見る”ことになるので、軌道を客観的にとらえやすくなるメリットがあります。
ノックバットを使わない「手投げ捕球」
打球を“横から見る”習慣を付けるために有効な練習方法に「手投げ捕球」があります。ノッカーが打った飛球を追うのではなく、ノッカーが“投げた”ボールを捕る練習です。
ノッカー役はひとまずバットを置き、ボールを持ちましょう。約30メートル離れたところから自分に向かって、捕球する選手を全力疾走させ、適当なタイミングで選手の方へボールを投げます(山なりでなくてOK)。この際、選手には横からボールを見るよう意識させ、自分の顔の斜め前にグラブを構えて捕球するよう指示します。
外野ノックを行う前にこの練習を行っておくと、自然とフライへの捕球の入り方が変わってきます。ノックを行う広いスペースがない時でも実施できるので、オススメです。
1人でできるフライ捕球の練習法
勝亦教授が推奨するのは、ノッカーがいなくても1人でできる練習方法です。柔らかいボールを使えば恐怖心が芽生えることもなく、特に野球初心者にオススメです。
①真上に投げる
右利きの人は右手で、左利きは左手でボールを持ち、下から真上に向かってポーンと投げて、グラブを持つ方の手で落ちてくる球をキャッチします。慣れてきたら、上げる方向を左右にずらして難易度を上げ、移動して落下点に入るようにします。
②「顔の横でキャッチ」を意識
練習の際に意識することは、必ず「顔の横でキャッチする」ことです。顔の横で捕球しようとすれば、自然とボールを横から見るクセもつき、捕球する手と顔との距離が離れることで起きてしまうミスの予防にもなります。
③慣れてきたら応用編
慣れてきたら、キャッチする際にジャンプしたり、地面すれすれの位置で捕ったり、さまざまな動きを加えてレベルを上げてみましょう。多様な状況での捕球感覚を養うことができます。
「フライ捕球」についてさらにレベルアップを図る練習法や考え方を知りたい人は、勝亦教授も参加している野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT(ターニングポイント)」で、多数の指導法を参考にしてみてください。簡単な無料登録で200本以上の動画が見放題。元プロ野球選手のお手本や、すぐに使えるトレーニングメニューなどが公開されています。
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3.強豪中学野球チーム監督が伝授するフライの捕り方
全国レベルの強豪チームでは、実際にどのようなフライ捕球の練習をしているのでしょうか。「静岡裾野リトルシニア」の佐藤監督は、フライを確実に捕るためのポイントを2つ挙げています。
打球を真上に置かない
高く上がったボールに対して目線を高く上げ、自分の頭の上で捕球をしようとすると、いざ捕るときに体がのけぞったり、固まったりして、後ろに逸らすリスクが高くなります。落下地点が自分よりも少し前にくるイメージで、目線を「斜め前方」にすることで、後逸の危険性を減らすことができるといいます。
グラブを構えて落下地点に行かない
フライを追う際は、両腕を振って落下地点に向かうのが重要だといいます。構えながら走ると打球を追うスピードが遅くなり、捕球までの時間的なゆとりがなくなるためです。つまり、グラブを構えるのは捕球の直前です。
佐藤監督は「早く落下地点に入ることができれば、捕球の準備をする時間ができます。送球への備えもできるので、タッチアップによる進塁を防ぐことにもつながります。打撃も同じですが、ボールは必ず自分の方に近づいてくるので、フライに対して慌ててグラブを出して捕りにいかないことも大切です」と説明します。
4.野球のフライの捕り方のまとめ
選手のレベルや苦手意識に合わせて練習法を変えていくことは大切です。初心者の子に対しては、勝亦さんのアドバイスが最適。ボールを上に投げて、一度地面を触ってから捕るようなバリエーションをつけると、試合で大飛球を追う時やチームメートの位置・動きを確認する時など、一度目を切ってからフライを捕る際に生きるといいます。工夫次第で、いくらでも技術習得につなげることができるのです。
もちろん、実際に試合で使う球で、グラウンドでノックをたくさん受けることも大切です。慣れてきたら、佐藤監督がチームの選手たちに伝えているポイントを踏まえて練習することが大切です。これまで紹介してきた基本や工夫を踏まえて練習を重ね、様々なシチュエーションで、様々な打球に対応できるようにしていきましょう。
「フライ捕球」のように、基本的な練習こそ意外と“正解”が分からないもの。教え方に迷った時は、ぜひ専門家の意見を参考にしてみてください。少年野球や中学野球の日本一に輝いた監督たちからも支持されている野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT(ターニングポイント)」では、無料登録だけで200本以上の動画が見放題。最先端の理論などをもとにした練習ドリルだけでなく、一流の指導者の考え方も学ぶことができます。
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