“飛ばないバット”時代の救世主? 軽くて安全…米国も注目の「新・国産木製素材」
高3リーグ戦で使用… 北海道自生のダケカンバ製バットは「しなやかでなめらか」
北海道で自生する樹木を使った国産バットの研究が進んでいる。ダケカンバ製のバットだ。8月に北海道で開催された高校3年生による個人参加型のリーグ戦「リーガサマーキャンプ2024 in北海道」でも提供され、実際に使用した選手から好評だった。関係者は年内の一般発売を目指している。
ダケカンバは、メープルのような硬さがありながら、アオダモのような打感の柔らかさを併せ持つ。10日間の「リーガサマーキャンプ」では、選手52人が25本のダケカンババットを使用し、折れたのは1本だけだった。米国内の大学でのプレーを希望して、カリフォルニアで行われるセレクションを受験予定の江戸一朗外野手(大阪学芸高3年)は「今回使わせていただいた北海道産のダケカンバは、しなやかでなめらかな打球が飛ばせます」と好感触を口にした。
軽くて硬いことが最大の特徴だ。「HAKUSOH BAT JAPAN」の代表でバットデザイナーの松本啓悟さんは、「木そのものが軽いものが多いため、軽いバットを作りやすい」と説明する。今回のサマーキャンプに提供したバットは870グラムと880グラムのものだった。メープル材で同じ重さのものを作ろうとすると、細くなりがち。ダケカンバは元々軽い分だけ、打球部をある程度太くして、打ちやすいバットに仕上げることが可能だ。
軽いバットは飛ばないというイメージを持たれがちだが、松本さんは「重いバットをゆっくりぶつけるより、軽いバットを速くぶつける方が打球は速くなる。選手からは“弾きがいいですね”と評価をもらっています。弾きはバットの評価として大事なこと。“軽くて打感がいい”とか、“メープルよりも硬く感じる”という声もありました」と話す。
機能について研究している北海道大学工学研究院の加藤博之准教授も「強度はメープル材とほぼ一緒」と太鼓判を押す。加藤准教授のもとには米国からの問い合わせもあり、新たなバット素材として注目されている。
高い安全性が求められる教育現場で優位性「ダケカンバはヒビが入る程度」
性能については、すでに一流打者の折り紙付きだ。日米通算1507安打を放った元日本ハムの田中賢介氏が、2019年に「メープルとホワイトアッシュの間のような柔らかさとしなやかさがある」と絶賛し、公式戦でも使用した。翌年からNPBの規定が変わり、現在NPBでは認可されていないが、BFJ(全日本野球協会)の公認は得ており、アマチュア野球では使用できる。
軽くて、しなやかなのに折れにくいという特性は、高校生にフィットする可能性を秘めている。高校野球では、今季から“飛ばない金属バット”の使用が義務付けられた。重さは900グラム以上と従来のままながら、バットの最大径が67ミリ未満から64ミリ未満となり、打球部の肉厚も厚くなった。
「今まではしっかり振ることができなくても、当たれば飛んでくれましたが、今のバットはそうはいきません。それならば、800グラム前半の木製の軽いバットでコントールをつけられる方がいいという声を、高校野球の指導者の方からいただいています」と松本さんは明かす。実際に、今夏の甲子園で本塁打を放った智弁和歌山の花田悠月内野手(3年)ら木製バットを使用する選手が出てきた。
高い安全性が求められる教育現場において、ダケカンバ材は優位性がある。加藤准教授によると「メープルは折れ方が激しく、危ない飛び方をする場合がある。ダケカンバはヒビが入る程度」だという。折れにくいという特性は、安全面に加え、コスト面でも心強い。練習用としても、試合用としても、使ってみる価値はある。
日本では、バット材の99%を輸入に頼っている。待望の国産バットの商品化について、松本さんは「今年中の販売開始を目指しています」と準備を進めている。硬式のほか、一般軟式と学童軟式のラインナップを計画中だという。
来年は学童野球でも打球部にウレタン、スポンジ等の素材の弾性体を取り付けたバットの使用が、少年用を除いて禁止される。飛ばないバットに移行する時代の流れの中、国産木製バットの存在感は高まりそうだ。
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