全体練習優先は「時間的ロス大きい」 要領よく個を伸ばす“3段階”キャッチボールドリル

文:内田勝治 / Katsuharu Uchida

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中学硬式野球・館林慶友ポニーの古島弘三代表「練習を“こなす”状況がよくない」

 練習でチームプレーばかり優先して、個々のスキルアップがおろそかになるケースは意外に多いのではないだろうか。群馬県館林市で活動する中学硬式野球チーム「館林慶友ポニー」は、シートノックなどの全体練習に時間をかけず、特徴あるキャッチボールドリルなど、中学生の選手個々の成長を優先したメニューを考えている。トミー・ジョン手術の“権威”として知られる慶友整形外科病院(同市)医師で、チーム代表を務める古島弘三さんに、その意図を解説してもらった。

「一例ですが、ケースノックなどは1回のプレーに時間がかかり、時間的ロスが大きいと思っています。1プレーに1分かかったら、30分で30本程度。30分あれば、1人1人にスキル向上のためのノックをやった方が効率的です。どのような練習が短時間で技術向上のために効果的かをいつも考えます」

 さらに古島代表は続ける。「特にウチのようなチームは、もともとが上手な子は少ないので、シートノックやケースノックに時間を費やすより、1人1人の投球技術指導をして、キャッチボール能力を引き上げるほうが将来を見据えてもいいと思っています。シートノックなどは高校、大学で多くやることになると思いますので」。

 連係プレーなどは、基本となるキャッチボールがしっかりできていなければ成立しない。キャッチボールに時間をかけ、様々なスキルアップにつながる練習をしている。

 ハンドリングと送球スキル練習の一例としては、レベル1からレベル3までに段階分けしたキャッチボールドリルを行い、技術向上を図っている。

レベル1=送球をグラブに当てて、ボールを1歩前の地面に落として拾って投げる。
レベル2=送球をグラブに当てて、地面に落ちる前に投げ手で拾って投げる。
レベル3=送球をグラブに当てるだけで、すぐに握り替えて投げる。

個人スキルのレベルアップ徹底…ドミニカ共和国で受けた衝撃

個を伸ばす館林慶友ポニーの練習の様子【写真:伊藤賢汰】

 このドリルでは、グラブの操作性、素早い握り替え、そして実戦をイメージした素早い送球の安定性を身に付けることが目的だという。

「ボールを受ける時にはグラブの当て位置で勢いを吸収し、ボールを思うようにコントロールすることが必要。最終的には、グラブでボールを捕っているのかがわからないくらいの素早さで、投げ手に握り替える技術の習得を目指します。グラブの深いところで捕球すれば、握り替えが遅れて急いでポロッとしてしまうことが少なくなります。様々な細かいスキル練習を行い、自然にうまくなろうということです」

 古島代表は、かつてドミニカ共和国の野球を視察した際、「遊んでいるような」練習風景と基本練習を多さに衝撃を受けた。チームプレーの様子を見ることがなく、楽しみながら個々のスキルを高めことに終始していたという。日本のように長時間練習で疲労することもなく、投球負荷も少ないため、エコー検診で肩肘の検査をしても、故障している選手はほとんど見られなかった。

「人口1000万人ほどのドミニカ共和国は、現役メジャーリーガーが100人以上いますが、日本人は数人です。この環境の違いが何なのかを知りたくて足を運びました。日本の長練習時間では集中力も低下し、疲労も感じて、だんだん力を温存しておこうと考えてしまう。ダラダラと走る癖もついてしまったり、当然怪我のリスクも高まります」

「何より、子どもたちが考える時間がないので、自らうまくなろうと気持ちが入らず、ただ“練習をこなす”状況になってしまうのがよくないですよね。ドミニカ共和国のいいところと日本のいいところを合わせて取り組もうと考えています。短時間集中で要領よく練習して、勉強もする、身体を大きくするために休養をあえて取るのもあっていいかなと、チャレンジしています」

活動は週3日で土日は半日…走り込みは「やらない方が身長が伸びる」

館林慶友ポニーの古島弘三代表【写真:伊藤賢汰】

 館林慶友ポニーの活動は、平日木曜の2時間半、土日は3時間半ほどと週3日のみ。中には物足りなさを感じる保護者や選手もいるかもしれない。ただ、そこに古島代表の狙いがある。

「あえて短時間にして、考えて行動し、自主的に取り組むこと。与えられたことをやるのではなくて、自分でプラスアルファして練習をアレンジしていこうよ、と選手には言っています。あとは体力的余力を残して帰す。家に帰ってバタンキューではなくて、勉強をしたり、壁当て練習をしたいなと思えるような余裕を与えてやることも大事。1人で壁当て練習しているのが、一番効率的で効果的だと思います」

「過度な疲労の蓄積は成長ホルモンが分泌しにくくなる」との医学的理由から、過剰な走り込み練習はやらせていない。中学生は身長を伸ばすチャンスだからだ。走る練習では、ダッシュでいかに早くトップスピードに持っていく技術を習得するか、どれくらいの力で走れば心拍数が150以上まで上がるかなどと、目的を持たせて行うことにしている。

「1年生と3年生では身長差が全然違います。走り込みをしない方がかえって身長は伸びていると感じます。みんな私の身長をどんどん越していきますね。1年生の小さい子も、2年後には、3年生のように大きくなっていると思いますよ」

 長々と与えられた練習をこなすだけでは上達しない。医学的な根拠を踏まえながらメニューを考え、自然と繰り返し行うスキル練習を効率的かつ効果的に取り入れる。もともとうまい子はそれほど集まらないが、3年の夏過ぎごろになると急に上達するという。館林慶友ポニーの選手たちは、成長の伸びしろが多く楽しみである。

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