プロ3球団で活躍した林昌範さんと元テレビ東京アナウンサーの亀井京子さん夫妻
野球少年に限った話ではないが、子どもの小食に悩む母、保護者は多い。“野球ママ”でもあるフリーアナウンサー・亀井京子さんもその1人。「心が病んでいく時もありました」と苦しかった思いを吐露した。夫は巨人、日本ハム、横浜DeNAで活躍した長身左腕・林昌範さん。父のように大きく育ってほしい――。母の切なる願いから、ひとつのアイディアが生まれた。子どもたちが大好きなアイスに目をつけた。 (2021年7月12日、Full-Count掲載)
◇◇◇◇◇◇◇
楽しい食卓のはずが……愛息の目から涙がこぼれていた。長男が3歳の頃、他の子よりも食が細いことに気がついた。小食の子の原因は人それぞれ。出されたものを食べない、食わず嫌い、食事そのものに興味がない、食事の時間が嫌……。最初は無理やり食べさせようとしたが、長男にとって、それが苦しい時間となっていた。
「小学5年生になった今、息子の胃袋は大きくなりましたが、全く食べなかった当時は『いっぱい食べなさい』と言い続けていました。私としては成長期を逃してほしくないという思いだったのですが、息子は半泣きになっていました。ご飯を『罰ゲーム』と言われたこともありましたね」
京子さんはアスリートフードマイスターの資格を持っており、現役時代の林さんを支えてきた。選手が受診する血液検査の結果を見て、食事から数値を改善。筋肉の修復や疲労の回復の速さを高めてきた。食べ物がスポーツ技術の向上、体の成長に大きく影響することを感じていた。野球選手の妻として、やりがいがあったのも事実だ。
今度は子どもにも――。しかし、そううまくはいかなかった。
「幼稚園の時は作ったお弁当も食べませんでした。先生からは『子どもに食べきった達成感を与えてほしい』からと、普通のお弁当箱ではなく、フルーツを入れる用の小さい入れ物にご飯を入れた時期もありましたね」
母親としての責任感から、苦悩する日々が続いた。食事が嫌いな長男がトイレに逃げ込んだり、食卓に1~2時間座ったままで何も進まない。ご飯は食べないけど、お菓子やアイスクリームはものすごい勢いで食べる。しまいには、そのままグダグダになって……寝てしまう。
可愛い我が子を怒りたくはない。でも、平常心でいられなかった。叱りつけてしまった自分に嫌悪感を抱いたこともあった。食のスイッチを探すのに苦労した。
次第にラーメン、焼きそばといった子どもが好む麺類などは口に運ぶようになったが、母の苦悩は続く。子どもの偏食に加え、現代のママは忙しい。毎回の食卓に並べる料理の品数や質にも限界がある。豊富なタンパク質やミネラル、鉄分などを含んだバランスの良い食事を作ってあげたいが、そうもいかない。夏場、そうめんやラーメンなど冷たい麺だけで食事を済ませた日は「ほとんどが糖質なので、ごめんなさい、と心の中で言っていました。罪悪感がありました」と自分を責める日々だった。
「主人が大きい(186センチ)ので、どこかで(大きくなるだろうと)油断があったのかもしれません。私も小さい方ではないですし……。本などを読むと体の大きさに遺伝子はそこまで関係していないんだということにも気づきました」
食への興味を持たせるために、家族で味覚狩りや稲作の体験にも出かけた。京子さんがその次に目を向けたのは栄養補助食品だった。粉末状のカルシウム、ビタミンDの成分を牛乳に溶かし、飲ませ始めてみたが、長くは続かなかった。正しい知識を持って、ジュニアプロテインも試した。商品によっては気にならないものがだいぶ増えてはいるが、長男は独特な匂いに過敏に反応。摂取することを拒み続けた。