野球とフリマの“意外なコラボ” 競技人口減阻止へ…暇持て余す子と「相乗効果ある」
高校、大学、社会人でマネジャー歴20年の川上哲矢さん運営…人が集まる場所にこそ勝機
野球の普及を底辺から支える人物がいる。ゴールデンウイーク真っただ中の今月4日。家族連れやカップルらでごった返す東京・中野区の中野セントラルパーク内で行われたフリーマーケットの傍らで、子どもたちが楽しそうに段ボール的当てに興じ、ティーボールを打っていた。野球イベントの企画・運営などを手がける「NICE BOX株式会社」の川上哲矢さんは、初夏を思わせる陽気に汗を拭いながら、充実の表情で振り返る。
「フリマとコラボしたのは2回目です。最初は大丈夫なのかと思いながら行ってみたら、とにかくすごい人でした。フリマに来る方と、公園に来る方のちょうど真ん中にいたので、どちらからも人が来て、トータルで460人ぐらい参加しましたね」
フリマと野球。一見、何の関連もないように思えるが、人が集まる場所にこそ勝機がある。買い物に熱中する両親とは対照的に、暇を持て余している子どもたちも多い。その横で、全日本軟式野球連盟と共に企画したイベントを開催し、まずは野球という競技に興味を持ってもらうことが狙いだ。
「野球チーム向けのイベントはありふれていますけど、今、我々がやらないといけないことは、野球の入り口の部分の普及活動です。親はフリマで掘り出し物を見つけたいんですけど、子どもはそこにはあまり興味はないので(笑)。いい相乗効果になったと思います」
盛り上がった“リアル野球BAN”…用具高騰もネック「変えていけるきっかけを作れたら」
強豪チームを陰から支えてきた経験が今に生きている。川上さんは、九州学院(熊本)時代の1年夏からマネジャーに転身。東洋大、そしてセガサミーと、裏方として20年間を過ごしてきた。名物マネジャーとして知られた社会人時代は、チームの活動と合わせて学童軟式野球大会の「セガサミーカップ」開催に尽力。野球教室も年間20回ほど企画するなど、普及活動に力を入れてきた。
「社会人はお金もあって、いい施設も人材も持っていますし、どんどん普及活動をしていかないといけないと思っていて、マネジャーをやっている時は一番好きな仕事でした。喜んでもらえるのがうれしくて、やっぱりこういう活動って大事だなと、当時から興味がありましたね」
2021年限りでマネジャーを勇退したが、普及活動への思いが募り、セガサミー退社を決断。知人の野球教室運営などを手伝いながら、昨年9月に「NICE BOX株式会社」を立ち上げた。「野球界へのお役立ち」が会社のテーマだ。
フリマとコラボした翌5日には、東京・町田市の鶴間公園で行われた「南町田ファミリースポーツフェスタ」で、ボール1つでできる“手打ち野球”の「ベースボール5」体験会を開催。日大三(東京)のエースとして2011年夏の甲子園優勝投手となった吉永健太朗さんを講師に、子どもたちは投げて打つことの楽しさを堪能した。
「以前は『リアル野球BAN』もやってみたら、すごく面白くて、場所に応じて普及の形を変えてやっていくのはありだなと感じています。野球道具が高いというのもかなりネックで、それが野球を始められない1つの原因ではあるので、それを変えていけるきっかけを作っていけたらと思っています」
1人でも多くの子どもたちがボールを手に取り、野球人口の減少を少しでも食い止めるために……。川上さんは手を替え品を替え、今日もどこかでその魅力を伝えている。