“保護者の負担なし”謳う選手集めは「安売り」 親子の関わり増やす地域一体運営

公開日:2025.01.29

文:First-Pitch編集部

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令和の少年野球チーム運営とは? 元鷹・松田宣浩氏と多賀少年野球クラブ・辻正人監督が対談

「令和に求められる指導法やチーム運営」とはどのようなものか。ソフトバンク、巨人で活躍し、現在は少年野球指導に携わる松田宣浩氏と、全国大会で優勝3度を誇る学童野球の強豪、多賀少年野球クラブの辻正人監督が対談を行い、現代の指導のあり方や、選手・保護者との関わり方などについて語り合った。

 滋賀出身の共通点を持つ2人。現役時代に通算1832安打、301本塁打をマークし日本を代表する打者として活躍した松田氏は、引退後は“新米の少年野球指導者”として奮闘している。指導歴37年目の辻監督との対談では「子どもたちに野球を好きにさせる極意」「昭和、平成、令和の指導法の変化」など、熱く討論する場面が見られた。

 多賀少年野球クラブは、今でこそ部員数100人を超える大所帯だが、創設当初は解散の危機が何度もあったという。いわゆる“勝利至上主義”の指導で「自分に信頼・信用がなく、手っ取り早いのが勝つことだった」と辻監督は振り返る。だが、「今のスタイルならついていけない」と退部者が出てるようになり、自身の指導法に疑問を抱くようになった。

 転機になったのは2012年に欧州で行われた世界大会。他国の子どもたちは明るく、楽しくプレーする姿が目立ち、指導者や保護者ら大人たちがチームを盛り上げていた。結果的に日本が優勝はしたものの、「周りは勝ち負けとかそこまで気にしていない。予選では笑顔のなかった日本の子どもたちも、(最後は)ずっと笑っていました」。その姿を目の当たりしたことで、考えを改めたという。

少年野球チームの運営は「保護者の力がゼロじゃ厳しい」

野球育成の“先輩”辻監督の話に聞き入る松田氏【写真:伊藤賢汰】

 少年野球では、チーム運営において、指導者と保護者の関わり方も永遠のテーマといえる。松田氏がコーチを務めるチームはまだスタッフも少ないため「保護者の力がないと成り立たないかなと。保護者の力がゼロじゃ厳しい」という。野球経験のある・なしは関係なく、「どういう部分でもいいから(力を)借りているのが現状。全部を子どもで回すのは厳しい」と感じているという。

 辻監督も「運営としても成り立たないですよね」と指摘。これからは、保護者がチームや息子、娘たちと、積極的に関わりたくなるような環境を作っていくことが大切だと感じている。

 現在は「保護者の負担ゼロ」をうたい文句にし、部員を集めるチームも存在するが、「“お茶当番”とよく言われるが、それは昔からない。ですが、見守り当番はある。怪我をした時など、指導者だけじゃどうしようもない時の当番はある。『保護者の負担がない』というメンバーの集め方は、安売りかなと。余計に(少年野球界が)衰退していくことになる」と警鐘を鳴らし、「今後は、(親子で)今野球ができることが『楽しい』という雰囲気をつくりながら、親御さん、地域の人たちと一緒に育てていく。そういう野球・スポーツの進め方にならないと」と語った。

 もちろん、土日に仕事があるなど、家庭環境によって練習、試合に親が帯同できないこともある。「強制じゃなくていい。でも、一緒にやるのは楽しいじゃないですか。だって自分の子どもですよ。よその人に育ててもらいながら、自分でも育てる環境をつくってほしい」と辻監督。たとえ30分の短い時間でも、できる限り子どもたちの成長する瞬間を共に過ごすことを推奨している。

【実際の様子】“新米コーチ”松田宣浩氏が考える保護者との関係性 学童名将と語り合う「令和のチーム運営」

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