少年野球コーチの「教えすぎ」が及ぼす弊害 子どもの“発見”が本当の成長を促す
元巨人チーフスコアラー・三井康浩氏は多くの子どもたちに野球指導
巨人や2009年の侍ジャパン日本代表でチーフスコアラーを務めた三井康浩氏は解説者や小・中学生の野球指導を行っている。“分析”のプロによる子どもたちへの指導は細かそうに見えるが、実は正反対。長所を伸ばす指導をモットーとし、伝えることは至ってシンプル。それでも生徒たちはどんどん結果を出して、野球へのめりこんでいく。一番は「大人が教えすぎないことですよ」と秘訣を明かしてくれた。
都内の野球施設で週5日以上、行う三井氏のレッスンは予約で埋まっている。将来有望の“金の卵”たちがバットを振っている。クセや配球、攻略パターンなどを見抜いて、相手を丸裸にしてきたスコアラーとなれば、子どもたちの直すところもたくさん気づくはず。だが、三井氏は少ない口数で生徒たちを伸ばしていた。
「よく指導者の方で肘の角度やら、スタンスやら、細かいところまで言及している方がいますが、そんなところまで打席に入った時に考えられる小学生はそうはいないと思います。体が動くようにやらせてあげるのがいいんです」
指導をしていく中、「今のどうだった?」「こうするとどうだ?」などと三井氏は子どもたちに問いかけるケースが多い。
「教えすぎてしまうとそれに頼りすぎてしまうんです。自分で発見することがなくなってしまう。子どもが一番伸びるのは『これはいい!』と自分が気づくことなんです。そのヒントをこっちが与えてあげればいい。教える方と教わる方が合うか、合わないか。それだけの話です」
野球経験が豊富で知識が多いからといってそれがいいとも限らない。「プロ野球選手上がりは細かいよ」とかつて巨人の選手だった三井氏は笑う。
「でも、細かいところまでは言い過ぎない。そのときは良くなるかもしれないけど、もしも、スランプになったとき、その期間が長くなってしまいます。土台になる部分を教えてあげられればいいんです」
自分自身の“基本”に立ち返ることができないと、成長は止まってしまう。子ども頃から言われるがままのスタイルだと、指示待ちの選手になってしまう可能性だってある。
「野球が変わっている中、指導者も基本を勉強しないとダメですよ。打つ、守る、走るの基本とは何か。ボールの握り方すら知らない大人がいっぱいいますから。しっかりと体ができて、こちらが言ったように動くことができるようになるのは早くて中学1年生くらい。その時まで、基礎など最低限のことを守らせておけば応用が効くようになります。あとは目一杯、野球を楽しんでもらえればいいと思います」
(First-Pitch編集部)
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