剛速球を「負けずに強く打て」は正解? 名球会打者が力説…投高打低を覆す“逆転発想”

通算2186安打の内川聖一さんが「大人の野球レッスン」で打撃指導
「投稿打低」時代のバッターに必要なのは、決して受け身にならない“発想力”だ。NPB通算2186安打の名球会バッターで、セ・パ両リーグ首位打者の実績を持つ内川聖一さん(元横浜、ソフトバンクほか)と、大手スポーツメーカー・ミズノがタッグを組んでの「大人の野球レッスン」が4月下旬、東京都内で開催された。自らが培ってきた考え方をもとに熱い打撃指導を行った内川さん。「打席で悩んでしまう」という参加者に向けて送った、少年野球にも役立つアドバイスとは。
野球を愛する大人たちへ一流の教えを伝えることで、広い意味での野球普及に繋げていくことを目的としたこのイベント。内川さんは抽選で選ばれた28人に、2部4時間にわたってきめ細かく指導を行った。途中の質疑応答の時間、ある参加者から打ち明けられたのは「打席で考えすぎてしまい、体が思うように動かせない」という切実な悩み。それに対し内川さんは、「打席で考えちゃいけません」。即答だった。
「打席で考えることが間違い。考えないためにも、ネクストバッターズサークルという準備の場所があるんです。そこでタイミングをはかりながら『インコースを狙おう』『変化球を打とう』と決めて打席に入る。考え込んで同じところに留まっていたら、どんどん時間は過ぎて相手が有利になってしまいます」
明確にアドバイスができるのも、現役時代に「打席の中でめちゃくちゃ悩んだ経験がある」からこそ。「マイナスのことしか頭に浮かばない、みたいな状態ってすごく理解できる。だから自分の経験を踏まえ、どういう言葉にすれば伝わるかなと考えています。これも、野球を長くやらせてもらえたお陰ですね」と語る。
球速160キロも珍しくなくなるなど投手のレベルが向上し、近年の球界は「投高打低」傾向が強まっている。プロでは3割打者が激減し、少年野球では高反発バットの制限など“逆風”も吹く。
右打者史上最高打率.378(2008年)の記録を持つ内川さんも、「先に自分で出力を上げたり、操作できたりするのは投手であり、どうしても打者はそれを追いかける形になる」と認める。それでも、「理論が溢れ、どれを選択するかなど、僕らの時代より難しくなってきているけれど、だからといってバッターがこのままじゃいけないという思いもあります」と、現役さながらの矜持も示した。
タイミングをゆっくり大きくとることで「投球との距離を作れる」

実際に、投高打低を覆すヒントになりそうな“逆転の発想”は、この日の指導の中にもあった。たとえば、剛速球への対応についてだ。速い球を打つとなると、どうしても始動を早くしようと考えるのが普通だが、内川さんは「僕は逆だと思います」と明確に語った。
「早く打とうとすると、人間はどうしても動きを小さくしようとしてしまう。体が固まって思うように振れなくなるし、前に突っ込みやすくもなる」。だからこそ、“ゆっくり大きく”タイミングをとる意識が大切だという。「18.44mという(投本間の)決まった距離がある中で、体が前に出てしまえば余計に打てなくなります。ゆっくり大きくとることで、ボールから離れる(距離をとって見る)ことができるんです」。
「速い球に負けないために、強く弾き返す」という考え方にも逆の見解を示す。「(球速)120キロと150キロだったら、150キロのボールの方が反発力は上がる。ならば、速いボールこそ力を抜いて打つ方がいいと僕は思います」。こうした発想は、子どもたちの指導にも通じるという。

「『強く打て』と指導者に言われ、最初から力んで、体の軸をぶらして振っている子っていますよね。それならば、打つポイントのところで、バットを速く通すイメージで振ってみて、と伝えた方がいい。選手に求めている姿は同じでも、伝える表現の幅はいっぱいあっていいと思います」
実際に、この日の指導でも参加者の個性に合わせ、様々な引き出しを駆使してアドバイスを送った内川さん。「単にバットに当てるだけでなく、ボールにしっかりとパワーを伝えなければ飛ばせない。その両方の作業が必要なのがバッティングの難しさであり、面白さです」。希代の安打製造機は、今後は名指導者としても期待がもてそうだ。
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