お茶当番撤廃、荷物は選手担当 「やらせてくれない」が契機…“親の姿がない”チーム運営

文:川浪康太郎 / Kotaro Kawanami

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「やりたいスポーツをやって」…元楽天・土屋朋弘氏が設立した少年野球チーム

 親の意向でスポーツの選択肢が狭まるケースは少なくない。危機感を覚えた元東北楽天ゴールデンイーグルス投手の土屋朋弘さんは、「子どもには自分のやりたいスポーツをやってほしい」との思いで、宮城・仙台市に少年野球チーム「Wild Geese Baseball Team」(ワイルドギーズ・ベースボールチーム)を立ち上げた。少年野球における課題の1つである「親の負担」を、最小限にとどめる取り組みに力を入れている。

 4月中旬、「Wild Geese Baseball Team」が練習する仙台市内のグラウンドを訪れた。少年野球チームの練習と言えば保護者が我が子を見守る光景が目に浮かぶが、この日はその姿がなかった。

 球拾いやグラウンド整備、荷物運びなどは選手自身や指導者陣が行う。時には上級生が下級生に寄り添って教えることもある。指導者陣は代表の土屋さんのほかに監督、コーチとアルバイトのスタッフが数人おり、日によって人数には変動があるものの、基本的には保護者の手を借りずに練習を成り立たせている。

 また練習は原則午前中で終えるため、昼食を用意する必要がない。きょうだいで在籍している場合も午前と午後で分かれる懸念がなく、保護者の拘束時間を減らすことができる。「お茶当番」は撤廃し、審判や子どもの送迎も可能な限り指導者陣でカバーする。

 土屋さんは「部員の数が少なく、(選手に)自分たちで動く意識が染みついていない時は大変でした」と発足当初を振り返るが、部員数が20人まで増えた現在は不自由を感じていないという。

「野球を教えてほしい」きっかけはサッカー少年の一言

練習するワイルドギーズの選手たち【写真:川浪康太郎】

「親の負担減」に取り組むきっかけは4年前に遡る。楽天を退団後、トレーナーとして活動していた土屋さんは、ある少年サッカーチームで指導していた際に教え子の一人から「野球を教えてほしい」と懇願された。理由を尋ねると、少年は「野球をしたくても親がやらせてくれない」と答えた。

「親御さんに話を聞くと、拘束時間の長さや審判業務などに抵抗があるといった声が聞かれました。共働きの家庭も増えていますし、親の負担は確かに大きい。それを実感し、『親の都合で子どもが野球をできなくなる事態を避けたい』との思いが湧いてきたんです」

 実情を知った土屋さんは2021年に野球教室を始め、集まってきた選手たちの「試合をしたい」との要望に応えるべく、少年野球界の選択肢の1つとして2023年にチームを発足させた。立ち上げの際に重きを置いたのがやはり、「親の負担減」だった。

 土屋さん自身、高校時代はバレーボール部に入りたかったが親の意向で野球を選んだ。結果的に大学、社会人を経てNPB入りを果たしたものの、「高校ではベンチ外だった。あのまま野球を終えていたらバレーを選ばなかったことを後悔していたと思う」と回顧する。後悔する子どもを減らすため、これからも知恵を絞る。

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