「今の野球界には一体感がない」 経済的負担に懸念…“善意頼み”の育成指導の功罪

公開日:2025.03.08

文:佐々木亨 / Toru Sasaki

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MLBからアマまでを見てきた小林雅英氏「包括的な指導者支援の仕組みづくりを」

 野球王国の日本を支えているのは、数多くのボランティア指導者たちと言っていい。しかし、その現状には深刻な課題が山積している。絶対的守護神としてロッテや巨人、MLBのインディアンス(現ガーディアンズ)で日米通算234セーブを挙げ、その後プロや社会人野球のエイジェックでも投手コーチを務めた小林雅英氏は現在、白鴎大の投手コーチを務め、中学野球の指導者講習会などで講師を務めるなど活動中。直面した野球指導者の課題感について聞いた。

 現場の献身的な努力を評価しつつも、その持続可能性には疑問点が浮かぶ。小林氏が講師をした指導者講習会で、コーチたちは実費参加だった。遠方から来た人もいたため、交通費も心配になった。「そういう方がいないと、日本の野球は成り立たない」。感謝の思いもあるが、懸念も残る。

 講習会で指導者と触れ合う中で「時代に合った言葉遣い、接し方、練習方法に対してストレスを感じている指導者もいる」と感じた。これは単なる世代間ギャップの問題ではなく、野球指導における体系的なアプローチの欠如を示しているともいえる。

 指導者たちからは、切実な声が聞かれるという。ストレスを感じる悩みに対し、小林氏は「皆さんが経験してこなかったところで、ヒントになることは伝えられます」と言う。社会人野球、プロ野球、そして今春から大学でのコーチ経験を持ち、さまざまなカテゴリーの現場を知る小林氏は、多くの“引き出し”を基に指導者たちの課題解決をサポートする。

 選手への言葉かけはもちろん、ピッチング技術においても、SNS系で情報過多になりつつある、単純に球速を上げるための方法を教えるのではなく、マウンドでの状況判断、またはイニングや点差を考えながら、いかに打者と対峙するかなど、いわゆる投球術の指導についても自身の豊富な経験から伝えている。

組織的な支援体制の構築を「団体、会社が目を向けてくれれば」

「今の野球界には一体感がないなと感じます」。プロ、社会人、大学、高校、中学、学童と、各カテゴリーが独立して活動する現状に対し、より包括的な指導者支援の仕組みづくりが必要ではないか。“ボランティア頼り”が多分にある現状を改善するため、「個人ではなく、団体、会社が目を向けてくれれば」と、組織的な支援体制の構築を訴える。指導者の経済的負担を軽減し、より多くの指導者が研鑽を積める環境を整備することで、野球界全体の発展につなげたいと考えている。

 将来を見据えた野球界全体での取り組みが、今、求められている。「指導者のあり方、出会い。指導者に目を向けることで、ちょっと野球への見方や考え方が変わり、選手も変わっていく」。この言葉には、指導者の質的向上が日本の野球の未来を左右するという、小林氏の強いメッセージが込められている。

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