“無理するな”時代の球児に懸念「飛び込まない」 過剰な安全思考「人生マイナスに」

文:川浪康太郎 / Kotaro Kawanami

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青森山田シニア監督が実感するコロナ禍の影響…消極的中学生を変える「約束事」とは

 コロナ禍で「無理をしなくていい」と言われて育った中学生年代をどう指導するか。2021、2022年に全国制覇を成し遂げた中学硬式野球「青森山田リトルシニア」の中條純監督は、最近の中学生の特徴について、「『無理なものは無理』と考えて頑張れない。野球のプレーでもギリギリのところには飛び込まないし、盗塁1つとってもアウトになるリスクがあれば走らない」と口にする。そしてその原因を「コロナ禍の影響もある」と考えている。

「学校に行きたくても、少しでも体調が悪かったり感染症の疑いがあったりしたら『来なくてよい』と言われてきました。『無理なものは無理』となるのも仕方ないですが、何もしない方が安全というマインドだと、今後の人生においてマイナスに働くと思うんです。できるかもしれないことは、頑張ってできるようにならないといけない」

 危機感を覚えた中條監督は、選手たちに「小さな約束事」を課すようにした。「道具を5分で片付けよう」「1週間、バッグの並べ方をきれいにしてみよう」「漢字テストを50点でもいいからクリアしよう」……。私生活から具体的かつ実現可能な範囲の目標を設定し、実現できた場合は「頑張ればできるじゃん」「もう一歩やってみよう」と気持ちを盛り上げる言葉をかける。

 野球の試合でも、「今日はショーバンだと思ったら走ろう」「今日は二塁まで進んだら三盗を狙ってみよう」などと「小さな約束事」を交わす。成功すれば褒め、失敗しても「根拠を持ってやった上での前向きな失敗なら価値がある」とフォローする。「何もしないことが一番安全だけれど、何もしないことが一番の失敗」。中條監督が私生活においても、野球においても選手に心がけてほしい教訓だ。

「選択」迫られる時代…ミスを避けるための“引き出し”

青森山田リトルシニアの中條純監督【写真:加治屋友輝】

 中條監督は、今の中学生のもう1つの特徴として、「知識と自分の技量を比較できない」ことを挙げる。YouTubeなどを通して簡単に知識に触れられる現代では「情報が溢れすぎていて、子どもたちが頭でっかちになっている」という。

 得た知識を技術に生かそうとする選手を否定することはしない。どう生かそうとしているかを聞き出し、そのメリットとデメリットを伝える。選手が知識の取捨選択を誤らないよう、「考える」ことの手助けをしている。

「料理ができない人に急に『グラタンを作って』と言っても無理なように、野球もいくら『考えなさい』と言っても材料、筋道、手段を知らなければ考えられるわけがない。SNSの普及とともに、さまざまな選択を迫られる場面が増えた時代を生きる彼らが、間違った選択をしないよう、自分で正しくジャッジできるよう、今はとにかく引き出しを増やしてあげたいと思っています」

 リスクを恐れる子や、情報の海に溺れる子。彼らを否定することなく正しい方向に導き、社会へ送り出すのが、コロナ禍やSNS普及を経て変化していく現代の指導者に求められる役割なのかもしれない。

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