OBから批判も…名門私学が取り入れたSNS 元4番が目指す高校野球“イメチェン”

公開日:2024.06.08

文:橋本健吾 / Kengo Hashimoto

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YouTube、インスタグラムなどSNSを運用する神戸弘陵の岡本博公監督

 高校野球の堅い印象を変え、時代に沿ったチーム作りを行う伝統校がある。春夏計5度の甲子園出場経験のある神戸弘陵(兵庫)はSNSを積極的に活用し、個々の状況報告や中学生の勧誘活動を行っている。“名門私学”のイメージを激変させた岡本博公監督は「神戸弘陵、選手自身のファンを増やしていってほしい」と、その理由を口にする。

「まだ全然、使いこなせていません。卒業生や選手、マネジャーに教えてもらいながら。携帯、パソコンとにらめっこしながら、なんとか頑張っています(笑)」

 岡本監督は苦笑いを浮かべながらスマートフォンを片手に、自身が取り扱うSNSについて口にする。チームの公式YouTubeチャンネル、インスタグラム、X(旧ツイッター)、Facebook。今後はTikTokも始める予定だという。私学の伝統校がなぜ、SNSを取り入れたのか? 当初はOBたちも乗り気ではなかったという。

「はじめは『チャラチャラして……』といった声も正直ありました。でも、私が生徒に伝えているのは『かっこいい野球部員でいよう』です。高校野球は注目を浴びる。行動や言動、いろんな面で見られていると思ってほしい。それは将来に必ずつながります。生徒の状況も、SNSを通じて父兄の方々も知ることができますし、中学生に向けた野球部紹介もできる。SNSを見て、うちのチームを選んでくれた子どもたちもいます」

 試合や練習の内容を伝えるツールとして使うこともあれば、YouTubeには野球部のプロモーションビデオを投稿しチームを紹介する。小・中学生に向け野球の楽しさ、魅力を伝えることも忘れない。指揮官の熱心な活動は徐々に実を結び、「練習見学に行きたい」「試合を見に行きます」とDM(ダイレクトメッセージ)が来るようになった。

初めて“楽しい”と感じた野球「顔色を伺いながらの練習は意味がない」

 同校は前田勝宏(元西武など)、山井大介(元中日)、東晃平(オリックス)らプロ野球選手を数多く輩出しているが、人気YouTuber「あめんぼぷらす」のメンバー・しょーたさんもOBの1人。ベンチ横に飾っている“溜めて解放”の文言も教え子からの寄贈だ。SNSの活用法についても「よく帰ってくるので、いろいろ教えてもらっています」と、岡本監督も感謝を口にする。

 岡本監督も同校OBで、1999年春に4番打者として甲子園に出場している。現役時代は厳しい指導を受けてきたが、「昔はやらされる練習がほとんどで、先輩後輩の上下関係もありました」と振り返る。だが、進学先の大阪体育大学は自主性を求められるスタイルで、「初めて野球を楽しいと思えた。顔色を伺いながらやる練習は意味がない」と、指導の原点を学んだという。

 SNSを取り入れた野球部として注目を集めているが、岡本監督は「もちろん甲子園。まずは県内で頂点を目指していく」と、力を込める。最速152キロを誇るドラフト候補の村上泰斗投手を軸に、報徳学園、神戸国際大付、明石商、社ら群雄割拠の兵庫を勝ち抜くつもりだ。

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