筑波大学・川村卓教授「捕ることができなければ、キャッチボールは成り立たない」
野球の“基本中の基本”でありながら、初心者の子どもにとって第一の障壁となるのがキャッチボールだ。その難しいながらも大切な基本を習得してもらうには、どのような方法があるのだろうか。つい投げる方に着目してしまいがちだが、野球コーチング論を研究する筑波大学体育系教授の川村卓先生(同大学硬式野球部監督)は、「投げることよりも、まずは捕ることから始めるのが大切」と語る。
川村先生は、研究室の大学院生や野球部員を指導役として、未就学児から小学校高学年・中学生の初心者に教える「ほしぞら野球教室」を、毎週水曜日に茨城・つくば市の大学構内で開催している。立ち上げから20年弱となるが、未経験者にとって最初の難関になると感じるのがキャッチボールだ。野球はボールを“投げる・捕る”の連続でアウトをとっていくスポーツだが、初心者にはその基本を成立させること自体が難しい。
そこで同教室ではまず、キャッチボール要素を省いた野球に似たルールのゲームで楽しんでもらい、それと並行してキャッチボールの基本習得を目指す工夫を凝らしている。
では、どのような手順で教えるのか。「まずは、投げることではなく“捕ること”から始めます」と川村先生は語る。そもそも捕ることができなければ、弾いたり逸らしたりした球を取りに行く繰り返しになり、捕る→投げる→捕る…の継続性に繋がらないからだ。「最初の段階は、投げ方はある程度不格好でも構いません。それよりも捕ることが優先です」。
捕球の上達には、ボールの軌道を予測し、来たタイミングでグラブを閉じるための“先取り”ができるかが重要だという。そのために、まずは「来たボールから逃げる」「来たボールを素手で弾く」「下から投げたボールをキャッチする」といった段階を踏みながら、目でボールの軌道を追い、タイミングをとる感覚を徐々に養っていくと良いという。
軽いものから重いものまで…様々なボールを投げて“距離感”を養う
グラブを使い始める際に注意したいのは、初心者は手首に近い“土手”の部分で捕ろうとしてしまうこと。あくまで素手でつかむ感覚のまま、ウエブの部分を使って捕るように指導することがポイントだ。
投げることについては、ゴムボールのような軽いものから、ドッジボールのような大きく重みのあるものまで、様々なタイプを投げて感覚を養っていくとよいという。「このくらいの重さのものを、これくらいの強さで投げたら相手に届く、という“距離感”をつかんでもらうことは大切。肘を上げるなどの細かい部分は、レベルが上がってきて小学校中学年くらいからで構いません」と説明する。
野球部監督を務める川村先生は、大学生くらいの大人になった段階でさらに上達できるかどうかは、子どもの頃の運動経験が左右すると実感している。「たまには自然のある場所に行って野山を駆け巡るとか、そういうことでも構いません。特に野球で使う動きは幅広いですから、できるだけ早い段階からいろんな運動に親しんでおくことが大事です」。
冬場の野球教室では、子どもたちが飽きないように短い時間で区切ったサーキットトレーニングも行い、保護者から「足が速くなりました」などと反響もあるそうだ。野球の伸びしろにつながる様々な感覚は、小さいうちから養っておくに越したことはない。
【実際の動画】キャンパスに響く歓声…段階を追って上達できる 筑波大学「ほしぞら野球教室」の様子
育成方法に熟知した指導者が多数参加…無料登録で指導・育成動画200本以上が見放題
野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」(ターニングポイント)では、無料登録だけでも200本以上の指導・育成動画が見放題。First-Pitchと連動し、小・中学生の育成に熟知した指導者・専門家や、元プロ野球選手、トップ選手を育成した指導者が、最先端の理論などをもとにした確実に上達する独自の練習法・考え方を紹介しています。
■専門家50人以上が参戦「TURNING POINT」とは?
■TURNING POINTへの無料登録はこちら