「打者は細かいリズムで投球を待った方が対応できる」
初めてのリズムトレーニングから1カ月、西森さんは再びインストラクターを訪ねて指導を受けた。トレーニングを繰り返していると、様々なリズムが体に入っていく感覚が生まれる。リズムによって自然と力の入れ方が変わり「感覚が研ぎ澄まされていきました。効率良く力を出す方法が分かってきて、野球をしていてすごく楽しかったです」と回想する。パフォーマンスの変化も感じていた。150キロを超す投手と対戦する際、無意識に反応してスイングできる場面が増えた。当時、西森さんは右肩を怪我して思うようなプレーができなかったが「体が万全ではなかった中で、技術が上がっていると感じました」と語った。
リズム感と打撃の関係性は、メジャーリーガーを見ていて感じる時もあるという。「タン、タン、タン、タン」の4拍子で育つ日本人と違い、ヒップホップやサンバの文化がある米国や南米の人々は、16拍子の細かいリズムが体に染み込んでいる。リズムの違いが打撃の違いに現れていると、西森さんは考えている。
「日本人が指導を受ける『いち、にーの、さん』という打ち方は4拍子です。細かいリズムと比べてタイミングを外されやすくなります。米国や中南米の選手がタイミングを崩されても腕や手首だけではなく体で反応できているのは、『タ、タン』のリズムが体に刻まれているからだと感じています。打者は細かいリズムで投球を待った方が、タイミングを大きく崩されずに対応できます」
右肩の怪我の影響もあって、西森さんはリズムトレーニングの効果を結果には十分につなげられなかった。だが、確かに感覚は変わった。現在、コーチを務める「GXA野球教室 神奈川・横浜戸部校」では、西森さんが子どもたちに野球の技術を指導し、専門のインストラクターがリズムトレーニングを担当している。「子どもたちにはリズムトレーニングの本質を詳しくは話しませんが、楽しみながら体を動かしているうちに自然とリズム感が養われたら最高だと思います」。リズムとの融合は、野球のパフォーマンスアップにつながると確信している。