数字にとらわれ過ぎての失敗談も…若い世代に伝えたい活用法
ただ、投球を数字で表現できるようになったがゆえの失敗談もあった。
「例えば、プロ野球の選手のデータと比べた時に、カーブの時間軸が浅いなと思うと、(曲がりを)かけにいきます。そうすると確かに数値としては同じボールも投げられるようになるんですけど、そのためにフォームが崩れたり、試合で全く“使えない”といったことも起きました」
達がこの“数字のわな”にはまったのは、3年になる春に出場した選抜甲子園の直後だったという。投球の目的は、打者を抑えること。そう思えるようになるまでに少し時間がかかった。「数値にとらわれ過ぎたというか……。こういう失敗も一つの経験だと思っています。バッターを抑えることが本質なのであって、数値は結果的にそうなればいい、今はそう思っています」。ただその感覚は、いち早くラプソードを使ったから手に入れたものだ。
「高校生や大学生は、やっぱりスピードや回転効率がいい数字として出ればうれしいんですよ。でも打者を抑えればいい。それが正解だと思います」
その上で、ラプソードの利用法として、若い世代に伝えたいことがある。「たまに測って終わりじゃなくて、調子が悪い時に、数値がどうなっているかを把握しておくといいと思います。悪いのはフォームなのか、リリースなのか。感覚だけじゃなく理解しておくと、修正もしやすくなる」。
達はラプソード導入から2年後、結果的にドラフト1位でプロの世界に飛び込んだ。今季は直球の威力を増すことを目的に、2軍で修行中。投球への興味も尽きない。「投資と考えれば、この80万円は安かったと思います」。ちなみに、購入代金は父にまだ返してはいない。「出世払いですね」。1軍での大活躍が、何よりの恩返しだ。




