守備力向上に“上手なノッカー”は必要か 日本一監督の持論「強くて速い打球は自己満足」

文:尾辻剛 / Go Otsuji

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今夏“全国2冠”「東海中央ボーイズ」竹脇監督が語る複数ノッカーの効用

 ノックの巧みさと守備力向上は比例しないと考えている。試合で様々な打球が来るのと同様、どれだけ多様な打球を受けられるかが重要だ。中学硬式野球で今夏、“全国2冠”を達成した愛知の「東海中央ボーイズ」(以下、東海中央)は、内野手の守備練習を3グループに分けて行っている。名古屋市内の練習場で内野を2面確保。それぞれノッカーが2人、計4人が“ノックの雨”を降らせる。残り1グループは手で転がしたゴロを捕球する練習となる。創部13年目のチームを全国屈指の強豪に育て上げた竹脇賢二監督が、ノッカーを2人で務める狙いと効果を説明した。

「ノックを2人(場合によっては左右のノッカー)で交互に打つのが、うちの強みです。限られた練習時間を効率的に使え、テンポよく数をこなせます。ノックを打っている本人はプレー自体が良かったか悪かったか分からない時がありますが、その時は打ってない方がよく見えているので指導ができるんです」

 選手が3学年合わせて100人を超える東海中央は、スタッフも25人確保。入れ替わり立ち代わりノッカーを務めるという。「ノッカーがうまいチームは選手が育つというけど、それは“まやかし”だと思っています。ノックが上手な人ほど“バンバン”と強く打ってしまいがちですが、それは自己満足の世界。ノックは下手でもいいんです」。強く、速い打球でなくてもいいというのが持論だ。

 実際の試合では、さまざまな打球が飛んでくる。予測できない不規則な打球もある。「ノックが下手な人はボテボテの打球になる時もあるけど、試合でもそんな打球はあります。グラウンド状態次第で1万球打てば1万通りの打球になる」。だからこそ、複数のノッカーで打つ意味が増す。

「東海中央は右で打ったり、左で打ったり、いろんなスタッフにノックを打ってもらっています。結果として、いろんな打球を多く受けているので質の高い練習になっています」。実質、25人のノックを受けさせ続けて堅守のチームを作り上げた。

ノックの打球にもこだわり「足を使って捕れる打球を」

3rdエイジェックカップで好守を見せた東海中央ボーイズ・井手尾航【写真:加治屋友輝】

 強さや速さは求めないが、ノックの打球自体にはこだわりがある。「捕れる打球をひたすら打つ指導者と、捕れるか捕れないかという打球を打つ人もいる。捕れない打球を捕ろうとすることで上達するという考えもある。僕は選手が足をしっかり使って捕れる打球を打ちましょうという考えです」。速い打球よりも緩い打球で選手を動かし、体の使い方を覚え込ませる。また、取れるアウトを確実に取れるようにすることが狙いだ。

 例えば三塁手には、マウンド付近へ緩いゴロを打つ。三塁手はダッシュで前進して捕球し、一塁に送球する。実際の試合では投手が処理する当たりで三塁手がさばくことはないが、足の運びを脳にインプットさせることで三遊間の打球への反応がスムーズになるという。

 逆に三塁線の明らかにファウルとなるコースに打つこともある。狙いは同様で、他のポジションも左右に弱めのノックを放つ。勢いでグラブに収まる可能性がある速い打球より、遅い打球でごまかしの利かないクラブさばき、足の運び方を習得してほしいという意図がある。

 ノックで打球に飛びつかせることも推奨しない。「時には必要ですけど、必要以上に飛びつかなくていい。怪我のリスクもあるし、そもそもファインプレーなんて出ないケースの方が多いんです」。

 心がけるのは堅実なプレー。「捕れる打球を100%アウトにすることが試合で一番大事。(7回制の)中学生だと21個のアウトをどれだけ確実に取れるかというところです」。勝利への最善策を探った結果、たどり着いた結論。合理的に考え抜かれた東海中央ならではの練習法である。

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