食事、歯磨き、睡眠、勉強…私生活で左手を強化

 鉄平氏は、それまでの打ち方では通用しないと感じたという。バットにボールが当たった瞬間、踏み出した右足が球威に負けて浮いてしまう。軸足の体重を踏み出した足に無駄なく移し、バットに力を伝える打撃フォームを模索した。

 左打者に転向してから、日常生活でも変えた部分がある。「打席が右から左になると、景色が変わります。首の角度も変わります。左打ちにしてからは寝る時に、打席と同じように、うつぶせになって右を向くようにしました」。左打ちの景色や格好に慣れるため、子どもながらにできることを考えた。

 意識的に左手を使うようにもした。箸を持ったり、歯磨きをしたり、文字を書いたり、少しでも左手を思い通りに操れるように知恵をしぼった。

「筋力は利き腕には勝てませんが、神経が多少でも左にいくようになったらと思っていました。実際に効果があったか分かりませんが、意識付けです。最初は左手で上手く食事ができずストレスは溜まりました」

 鉄平氏はグラウンド内外で努力を重ねて、プロで首位打者を獲得するまでの左打者となった。「スピードを評価されてプロに入れたので、右打者のままでは厳しかったと思います」。左打者への転向が野球人生のターニングポイントとなった。

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