東京農業大学・勝亦陽一教授が提唱する「理想の立ち方」
少年野球の子どもからプロまで幅広く、技術やトレーニングを指導している東京農業大学の勝亦陽一教授は、全ての動きの原点には「立ち方」があると気付いた。バランス良く立つ能力を身に付ければ、パフォーマンスアップや課題の解決につながるという。一例として、投手では走者を背負った時の投球、打者では変化球の対応に効果があると説明する。
勝亦教授は、少年野球の子どもからプロ野球選手まで共通する理想の立ち方があると説く。3本の脚でバランス良く立つ三脚のように、かかと、母指球(親指の付け根)、小指球(小指の付け根)の3点で立つ方法だ。重心が前後左右に偏らないよう体の中心で保つ。
立ち方を重視するのは、走攻守を問わず全ての動きが立つところから始まるのに加えて、野球は片脚で立ってプレーする機会が多いため。投手の場合、投球動作で軸足に体重を乗せる。この時にバランスを崩すと、ボールに力が伝わらず、コントロールも安定しない。
特に、走者を背負った場面では頭や目線を動かしながら軸足1本で立たなければならない。セットポジションになると制球を乱したり、球速が落ちたりする傾向が高いのは、安定して真っすぐ立つ難易度が上がっているためだ。勝亦教授は「立つ力」を向上させるトレーニングを推奨しているが、「片脚でバランス良く立つためには、できるだけ1か所を集中して見る方が良いです」と話す。走者を目でけん制した後は、すぐに捕手のミットなど1か所を集中して見ると投球のブレを避けられる。
打者は軸足に体重を乗せる時は片脚で立つ。スイングスピードを高めるには、片脚立ちの状態で頭の位置を投手側に大きく動かさずにステップ脚で踏み込むことが重要になる。投手と同じように、走者がいる場面では走者の動きを目で追いながらスイングするため、バランスは不安定になりやすい。また、外角に逃げる変化球などでタイミングをずらされると、早い段階でステップする脚の方に重心が移動してしまい、力強いスイングができなくなる。一方、片脚でバランス良く立てれば、頭や体が前に突っ込まず、ボールの見極めもできる。勝亦教授は投球も打撃も「片脚で立った瞬間にバランス良く立つことが大事」とポイントを挙げる。
バランス良く立つ能力は、ゴロの捕球や送球、盗塁といった守備や走塁でも生きてくるという。パフォーマンスを上げるためには、フォームの見直しや筋力アップも有効だが、それらの根本には「立つ」動きがある。