大変革は「すごくエネルギーいる」 筒香嘉智が描く人材育成…率先で創る“サンプル”

公開日:2024.01.05

文:喜岡桜 / Sakura Kioka

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少年野球チーム創設にメジャー仕様の練習施設…「子どもたちの将来に少しでも」

 MLBのジャイアンツ傘下でプレーする筒香嘉智外野手が、故郷の和歌山県橋本市に野球施設「TSUTSUGO SPORTS ACADEMY」を創設し、昨年12月上旬に竣工式を行った。ドジャースタジアムと同規格のメイングラウンドに、内野グラウンド、室内練習場を併設するなど、自ら2億円を投じ2年をかけて建設。そこには少年野球界の課題改善、そして、世界で活躍できる人材育成に向けた筒香の強い願いが込められている。

 2023年シーズンはメジャー再昇格を目指してプレーしながら、橋本市に少年野球チーム「和歌山橋本Atta boys(アラボーイズ)」を設立し、オーナーに就任。チームは昨年4月から本格的に始動し、「TSUTSUGO SPORTS ACADEMY」はその活動拠点ともなる。筒香の帰国に合わせて行われた竣工式では、やや緊張した面持ちで、女子2人を含む所属選手約60人と“初対面”を果たした。

 メジャー挑戦前年の2019年には日本外国特派員協会で記者会見を開き、トーナメント制によって生まれる勝利至上主義がはらむリスクについて警鐘を鳴らすなど、筒香は、かねてから日本の少年野球界における改革の必要性を唱えてきた。

 チーム創設も「口で言うだけでなく、理想としては全国の野球チームのサンプルになるようなチームを作って、子どもたちの将来のために少しでも(力になりたい)」という大きな決意によるものだ。

 時代は昭和から、筒香が生まれた平成を経て、令和になり、少年少女を取り巻く環境は変わりつつある。だが、指導者や保護者が勝利にこだわりすぎて、つい高圧的な言葉を発してしまうなど、筒香がこれまで言及してきた問題は今も散見される。

「大きく変化するのは、どの種類の職業においてもすごくエネルギーのいること。なかなか難しいことですが、正しいことを地道に続けていけば、必ず変わってくると思います」

野球を通して培う「全力で心が動く」道を選べる判断力

選手たちの「決意表明」を見守る筒香【写真:喜岡桜】

 竣工式の際に筒香は、選手たちに、ゆっくりとした口調で次のように語りかけた。「野球はチームでするものですけど、打席に立てば、ひとりです。すぐ隣には誰もいません。試合中、ボールが動いているなかでは、監督や周りの仲間が助けてくれることは少ないです」。

 つまり大切なのは自分自身で考え、行動できるようになること。DeNA在籍時からシーズンオフにドミニカ共和国のウインターリーグに挑戦するなど、言語の壁がある中でプレーした経験が豊富な筒香。子どもたちへ、普段から主体性を持つことの大切さ、そして、大人数で行う練習の中でも「自分自身としっかり向き合って、自分で考えて練習をしてほしい」とアドバイスを送った。

「世の中に出て、いろいろな競争を勝ち取る、また、いろいろな仲間と素晴らしい社会にしていくというような(意志を持った大人になるための)土台作りができる場所にしていきたい」と筒香。チームを巣立つ頃には、プレーだけでなく私生活においても「全力で心が動くような決断を自分で下せる判断力」を身につけてほしいと願っている。

 警鐘を鳴らすだけでなく、改善に向けて自ら行動を起こすその姿こそが、子どもたちにとって何よりの良き手本となるはずだ。