2軍選手より高数値の受験者も 午前中は野球道具使わず…西武が“異例”の入団テスト
野球技術よりも個々の選手が持っている潜在的な数値を計測
プロ野球ドラフト会議が20日行われる。早大・蛭間拓哉外野手の1位指名を公言した西武は、スカウティング以外でもスター選手を発掘しようとしている。10月8日、埼玉・所沢市内の球団施設で初めて入団テストを実施し、午前中は受験者が野球用具を一切使わない内容だった。数値や人間性を見極める意図があったという。
多様なアプローチで選手の可能性を見極める。午前7時過ぎから行われた入団テスト。異例のテスト内容に、参加した26人には、ややそわそわした雰囲気があった。午前中はバットやボールは一切使わない。脚力の最大パワーを測るワットバイクといった普段使う機会が少ない器具も使用し、個々の選手が持っている潜在的な数値を計測した。
ワットバイクの他にも、メディシンボールの垂直スローや10、20メートル走のタイムなどを計測した。西武が基準にしたのは、2軍選手の数値。秋元宏作ファーム・育成グループディレクターは「うちの選手たちよりも、いい数字を出した選手もいました」と明かした。
トレーニングやコンディショニングの知識や技術は日々新しくなり、選手の意識も高くなっている。選手の技術は確実に上がっている。ただ、球団側が主力になる力のある選手を見落とさないためには、実際のプレーだけではなく、潜在能力を見定める必要がある。秋元氏は数値化する理由を、こう説明する。
「ただ『打たせます、投げさせます』ではなく、選手のタイプや能力値、現在地を評価する必要があります」
潮崎編成グループディレクター「後から出る数値の方が大事」
入団テストを視察した西武の潮崎哲也編成グループディレクターも、“目に見えない部分”を重視していた。1歩目の速さや打球速度などを注視し「コンマ何秒の世界で数値を取っていたので、きょう見て『何がわかる』ではなく、後から出る数値の方が大事だと思います」と強調する。数値は渡辺久信GMらとも共有するという。
「初めての試みなので結果になるかわかりませんが、将来の伸びにつながるような数値がわかればと思っています。例えば、今はそこまでの選手ではないが、こういう数値が出たから『獲った方がいい』というようなことです」と潮崎氏。入団テストとしてだけでなく、選手の将来性を判断する基準も模索している。
入団テストを受けた選手は、20日のドラフト会議で吉報を待つ。球団初の取り組みからプロ野球選手が誕生し、プロの世界で才能を開花させるのか。野球界の新しい常識になる可能性がある。