なぜ飛距離が伸びる金属バットは良くない? 打者だけでない“投・守”に及ぼす弊害
「投手の障害予防に関する有識者会議」でも言及された「金属バットの性能の見直し」
今、アマチュア野球界では「勝利至上主義」から「選手の将来を考えた育成」へと方針転換する流れが生まれている。成長期の体に負担の大きい練習過多が重なり、結果として肩肘、あるいは腰などを故障。野球を続けられなくなったり、好きで始めたはずの野球が嫌いになってしまった例は後を絶たない。こういった悲劇をなくすため、日本各地でひとり、ふたりと指導者が立ち上がり、野球界に変革のうねりを起こしている。(2021年5月7日、Full-Count掲載)
例えば、新潟県では県高野連や中体連軟式野球専門部など9団体が垣根を越えて「新潟県青少年野球団体協議会」を立ち上げ、「新潟メソッド」と呼ばれる独自の指導理念や故障を起こさないための取り組みを作成。「野球手帳」という形にまとめ、子どもたちに配布している。
群馬県では、2015年から軟式野球の指導者を対象としたライセンス制度を導入。肘治療の権威で、館林市にある慶友整形外科病院のスポーツ医学センター長・古島弘三医師が監修する指導者講習会を毎年受講することが定められている。
時代の流れとともに世論や価値観が変化する流れを汲み、日本高野連では2019年4月に「投手の障害予防に関する有識者会議」を立ち上げた。同年に4度の会議を経て提出された最終答申には「高野連が主催する大会期間中に行われる試合を対象に、1人の投手が投げられる総投球数を1週間500球以内とする」という投球数制限が盛り込まれたことは、多くの人が知るところだろう。
同時に、この答申では「金属バットの性能の見直し」が盛り込まれていた。日本高野連は2020年2月に、従来の金属バットより反発係数の低い製品の試験を公開するなど、新基準の制定に向けて検討を続けている。現在、一般財団法人「製品安全協会」が定めるSG基準には、反発性能に関する規定は設けられていない。その一方で、2020年度より中学1年生の大会で、米国で使用される低反発バット=国際標準バットを導入し、その効果を感じているのが日本ポニーベースボール協会(以下ポニー)だ。