高校3年間控え…同級生がドラ1でも「腐ったら負け」 たゆまぬ努力が育んだ“共感”

公開日:2024.07.03

文:橋本健吾 / Kengo Hashimoto

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オリックス・森友哉の専属トレーナー・久米健夫さんは大阪桐蔭で“好敵手同士”

 諦めずに野球を続けたことで開けた世界がある。「どれだけ厳しい環境でも逃げずに頑張ることができたから、今の自分がある」。オリックス・森友哉捕手を支えているのが、大阪桐蔭高時代のチームメートで同じ捕手だった久米健夫さん。現在は専属トレーナーとして、厳しいプロの世界を生き抜く同級生をサポートしている。

 久米さんは中学時代に「和泉ボーイズ」で強打の捕手として活躍し、大阪桐蔭に進学した。2013年には春夏連続で甲子園に出場するも、自身の役割は控え捕手。同級生には後に西武からドラフト1位指名を受ける森がいたからだ。

「森は中学から有名で、入ってきた時からすごかった。でも、僕自身は絶対に森に勝って試合に出ると思い3年間練習しました。すごいやつがいるから頑張れる。腐ったら負け。しんどい時こそ人一番頑張る。『ここで逃げたら負けやぞ』と、言い聞かせながらやっていましたね」

 入学当初は同じポジションを争う“ライバル関係”ということもあり、話す機会はなかった。それでも、本気でレギュラーを目指し猛練習を続ける久米さんの姿に森も共感し、「チーム状況、練習、プライベートなど、なんでも話せる関係になりました」と、行動を共にするようになったという。

今も支えになっている西谷監督の言葉「人生のレギュラーになれ」

恩師の言葉を胸に森を支えている久米氏【写真:本人提供】

 恩師・西谷浩一監督からの言葉は、今でも支えになっている。「野球でレギュラーになることも大切だけど、最終的に人生のレギュラーになれ」。厳しい環境で努力を続けることは必ず将来につながる。“高い壁”と理解しながらも、がむしゃらに白球を追い続けた。

 結果として森からレギュラーを奪うことはできなかったが、2人で過ごした時間は無駄ではなかった。関大に進学後は1年春から正捕手として活躍し、3度の神宮大会出場を経験。社会人の名門・東京ガスでは副主将を務め、2021年限りで現役を引退した。社業と練習の合間を縫いトレーナーの勉強も続ける中、森からの誘いを受け、専属トレーナーになることを決心した。

 安定した大企業を辞めることにも迷いはなかった。「僕のなかではワクワク感しかない。今しかできない。ここで決断しないと一生、チャンスは来ない」。現在は大阪・堺市で子どもからプロ野球選手までが通う身体機能向上アカデミー「夢道場」を設立し、主にパフォーマンスが上がる身体の使い方を指導している。

「子どもたちには、たとえ今試合に出られなくても、やり方次第で必ず成長すると伝えています。だから、自分に向き合って徹底的にやり込むことが大事。準備をしていれば必ずチャンスは回って来るので、そこで必ずつかむことが大事になります」

 経歴だけを見れば、久米さんは“野球エリート”を歩んできたかもしれない。だが、今の立場があるのは、裏に隠された絶え間ない努力があってこそ。「我慢、継続する大切さは僕が一番、経験している。その部分は伝えていきたい」。野球界の将来を担う子どもたちに向け、久米さんはこれからも語り続ける。

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