無用な当番に同調圧力…“時代遅れ”の野球チーム淘汰へ 悩む親子を救う「抜本的解決策」

公開日:2023.07.14

更新日:2024.05.08

文:高橋幸司 / Koji Takahashi

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「チームで話し合うことが大事」と野球講演家・年中夢球さん

 全日本軟式野球連盟が6月に、全国の支部に向けて発出した“異例の通達”が話題となっている。学童野球チームの保護者への「過度な負担」や「同調圧力」などを避けるよう求めるものだ。親にとって「お茶出し」などの当番が負担になったり、指導者や他の保護者との人間関係に悩まされたりすることで、結果的に子どもたちの野球人口減少につながる。リトルリーグなどで約20年指導者を務め、野球講演家として活動する年中夢球さんは、「そうした問題を解決できる方法はある」と語る。

 まず前提として、連盟の通達内にもあったように「今までの当たり前」をチーム内で見直すことが重要だと、年中夢球さんは言う。

「当番や係が本当に必要なのかを、チームで話し合うことが大事。環境によっては本当に必要なケースもあるでしょう。最もいけないのは、『昔からそうだ』『慣習だから』というもの。必要な理由がしっかり答えられないのであれば、その当番はいらない、ということです」

 土日に仕事に出なければいけない保護者も当然いるし、家庭によって置かれた状況は様々。価値観も多様化するなか、“ルール”に固執するのが本当に良いことなのか。大人たちが古いしがらみにとらわれ、選手たちが野球から離れてしまっては本末転倒だ。「大人がやっている当番の中には子供が出来ることもたくさんあります。大人がやらせないだけです。子どもたちでできることを増やせば、親の負担も減らせるはず」と、年中夢球さんは工夫の余地があると語る。

選手の移籍は「どこの地域でも『自由』と統一してほしい」

 そして、最も大切なのは監督・コーチが確固たるチーム方針・指導理念を持つこと。そして、それらを保護者に浸透させ、また、入団を希望する保護者にも事前にきちんと伝えることだ。「入団前の事前説明は、本当に大事。『うちはこういう方針です』『当番もお願いします』ときちんと話をすることで、後で『聞いていなかった』というトラブルがグッと減らせます」と年中夢球さんは指摘する。

 さらに、そうした問題を一挙に解決できる方法が、「子どもたちの移籍を自由にして、どのチームに移ってもよいとすること」だと年中夢球さん。「今のチーム方針が合わない。入ってみたけれど聞いていた話とは違う。だから他のチームに移る、ということがフリーにできるようになれば、当然、需要のないチームは自然淘汰されていくでしょう」。

 全軟連は原則として年度内の選手の移籍を認めていないが、昨年7月に規定を改定し、「転居及びその他考慮すべき特別な理由を有する場合」は移籍を認める、とした。「考慮すべき特別な理由」とはつまり指導者のハラスメントなどのことだが、「ほとんどの地域で移籍が許されていないのが現状。だから、指導者に怒られ続けても我慢してチームに残るか、野球を辞めるしかなくなる。移籍に関してはグレーにせず、どこの地域であっても『自由にできる』と統一してほしい」と年中夢球さんは力説する。

 今春のワールド・ベースボール・クラシック優勝による盛り上がりや、エンゼルス・大谷翔平投手の活躍などで、野球に興味を持つ子どもが増えていることは確か。しかし、旧態依然としたシステムによって、その熱に水を差してしまってはあまりに惜しい。少年野球界は制度改革も、意識改革も、待ったなしだ。

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