
2025年に元監督の西尾弘幸さんが死去…江戸川区立上一色中が都大会2連覇
“変革”の中にある名門が、また一つ新たな歴史を刻んだ。「全日本少年軟式野球東京都大会」は6日に大田スタジアムで決勝戦が行われ、上一色中が延長8回タイブレークの末に駿台学園中を2-1で破り、2連覇を達成した。上一色中を全国大会常連の名門に育て上げた西尾弘幸さんが、2025年4月に死去。新入部員も激減したが、持ち前の勝負強さを発揮した。強さを維持できた背景には、伝統の“アップデート”があった。
上一色中は、初球から積極的にスイングする「強力打線」を持ち味に、2022年に“中学生の甲子園”と呼ばれる「全日本少年軟式野球大会」で優勝、「全国中学校軟式野球大会(全中)」で2度の準優勝を誇る名門だ。2006年から同中を率いた西尾さんが作り上げたスタイルに魅了され、毎年数十人の中学生が野球部の門を叩いてきた。しかし、そんな西尾さんを病魔が襲う。2024年夏に監督を退き療養生活へ。そして、昨年4月30日に67歳でこの世を去った。
名将の訃報の影響力は大きかった。例年30人前後の新入生が入部するが、昨年はわずか5人。今年も約半分の17人と、例年通りには戻らなかった。たくさんの部員で何箇所も打撃練習のセットを作るのが、上一色中の伝統の形。西尾さんを知る“最後の世代”の池ヶ谷碧人主将は「はじめは練習の準備がうまく進まなかったり、実戦的な練習の時にランナーが足りなくなってしまうこともありました」と語る。
十数年かけて築かれた伝統が崩れかけそうになった時、西尾さんからバトンを受けた西山博城監督は、“アップデート”に踏み切った。「今はゲージでバッティングしながら、合間でノックをして守備を鍛える形で練習しています。部員が多かった時はそこにも入れない子たちがたくさんいたり、工夫しないと場所がなくて練習できなかったので、今はより効率的に回っています。人数が減って、メンバーの質が落ちたという感覚もないです」。
池ヶ谷主将も「人数が少なくなって、どれだけ効率的に回すかをみんなで話し合って、改善していきました。少ない分集中して取り組もうというのは、練習も試合も意識して声を出しています」。選手たちにも、ハイレベルな上一色中であり続けたい意識が浸透している。
勝負強い上一色中は“健在”…表現する「日本一楽しく全力」の野球

決勝戦では、中学野球界で屈指の実力を持つ駿台学園中に競り勝った。2回にチーム初安打が出て以降は走者を一度も出せず。しかし、集中力を切らさず無失点に抑え続け、延長タイブレークへ突入した。8回表に1点を失ったが、その裏に相手の失策絡みで無死満塁とすると、内野ゴロで同点に追いつき、8番・中川豪太が適時打を放ちサヨナラ勝ち。駿台学園中・西村晴樹監督も「終盤で1本が出たり、やっぱり威圧感や勝負強さがありますよね」と舌を巻いた。
決勝戦後、西山監督は「僕は西尾先生を尊敬していますし、西尾先生に憧れて西尾先生の野球が大好きです。だから何かを変えるとかじゃなくて、上一色の打ち勝つスタイルは引き継ぎながら、目の前にいる子どもたちにできることを考えてアプローチしています」と語った。勝利の喜びと、どこか安堵も感じさせる充実した表情だった。
上一色中は、8月に横浜スタジアムで行われる全日本少年軟式野球大会出場をかけて、関東予選に臨む。「テーマにしている『日本一楽しく全力で取り組む野球』をお見せできたらと思います」と西山監督。上一色中の新たな挑戦を、恩師も天から見守ってくれていることだろう。
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