最終面接で敢えて質問「友達の特長教えて」 西武Jr.で重視する“非認知能力”とは

公開日:2025.06.23

更新日:2025.07.11

文:宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki

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埼玉西武ライオンズジュニアが重視する“非認知能力”「優勝よりもその先が大事」

 プロ野球の各球団が小学生選抜チームを結成して優勝を争う「NPBジュニアトーナメント」は、21回目を迎える今年も12月26日から29日まで開催される。各球団が選考会を重ね、それぞれ最終メンバー16人を選出。埼玉西武ライオンズジュニアを8年連続で率いる星野智樹監督、昨年から指導陣に加わった白崎浩之氏(ジュニアチーム代表)、長年ライオンズジュニアに携わってきた球団職員の田中宏征氏に、チームの方針、求められる選手像などを聞いた。

 ライオンズジュニアでは、動画提出による第1次選考に、例年約600人の応募があるという。その中からバッテリー50人強、野手50人強の計100~120人が、ベルーナドームで行われる第2次選考会(走力・体力測定、キャッチボール、バッティング、ピッチングなどの実技)に進む。そこから最終選考会(紅白戦など)に臨むことができるのは約40人。そして本戦に挑むメンバーは、わずか16人という“狭き門”だ。メンバー確定後は年末の大舞台へ向け、毎週土日祝日を利用し、約4か月かけてチームをつくっていく。

 実は昨年から、ライオンズジュニアはチームの方針を大幅に見直している。「優勝を目指すだけでなく、その先の人生において必要な力を、野球を通じて身につけてほしい。そんな思いから、“非認知能力”を高めることをチーム方針の1つとして掲げました」と田中氏が明かす。

 非認知能力とは、数値で表せない内面的な力のこと。例えば、粘り強さや好奇心、失敗から何を学んで次にどう生かすか。自分の考えを言葉にし、どう他人に伝えるかというコミュニケーション力なども含まれる。「これらは中学、高校、大学に進み、社会人になり、たとえ野球競技を終えたとしても、どんな組織でも必要とされるスキルだと思います。野球を通じて身につけられる環境をつくっていくとともに、その取り組みや裏側も積極的に発信していきたい」と田中氏は説明する。

 実際の選考では、どんな子どもが評価されるのだろうか。星野監督は「速いボールを投げられる、強いスイングができる、足が速いといった、特長のある子が有利なのは確かですが、一方で、野球にひたむきな子、一生懸命に取り組む子もを選びたいとも思っています」。前述の非認知能力も評価の対象で、「昨年の最終選考会では面接を行い、『一番仲のいい友達の特長を教えてください』と問いかけて、全く予備知識とない私たちに、どのような言葉や伝え方をしてくれるか、その姿勢を含めて見させてもらいました」と一例を挙げた。

保護者とのコミュニケーションを重視…所属チームも含めて1つのチームで

野球を通じた生きる力を身につけてほしいと語る【写真:伊藤賢汰】

 星野監督は現役時代、西武で14年間、楽天で1年間、主に中継ぎ左腕として活躍。現役引退翌年の2014年に初めてライオンズジュニアのコーチを務め、2018年から監督として指揮を執り続けている。「プロと同じユニホームを着て、同じ球場でプレーする。毎年、子どもたちの目の輝きを感じています。子どもたちにとっては夢に近づける、非常にありがたい大会」と意義を痛感している。

 ライオンズジュニアでは本メンバー決定後、保護者とのコミュニケーションを重視している。「もし保護者の方々が毎日『こういう打ち方をしろ』という内容と、週に1、2回しか会えないわれわれの言うことが違っていたら、子どもはどちらを信じたらいいかわからなくなってしまいます」と星野監督。「われわれの言うことが常に正解というわけではなく、子どもたち自身の考え、保護者の考えも聞きながら、いい方向を探り、同じ方向を向いていきたい」と強調する。

 また、子どもたちは、それぞれ普段プレーしている所属チームもある。そこでの指導内容との擦り合わせも重要な課題となる。

 例えばバットの問題だ。昨年までの学童野球では、打球部にウレタンなどの別素材を用いた高反発の大人用複合バットが公式戦で使用できていた。一方ジュニアトーナメントで使えるのは金属か木製に限られ、少年用の複合バットも禁止されている。

「昨年までは、子どもたちが普段の所属チームで高反発バットを使い、ジュニアの活動に戻ってくるとバッティングがおかしくなっている、ということもありました」と星野監督。「高反発バットなら、少しこすったような打ち方でも長打になりますが、通常の金属ではファウルになることが多いのです」と指摘する。

 現役時代に横浜DeNA、オリックスで内野手として活躍した白崎氏も「バッティングは年代が上がるにつれて、下半身を鍛えるなど、いろいろなことをやっていかないと確率が高くならないのですが、高反発バットに慣れてしまうと、楽をして打つ癖がついてしまう恐れがあります」と懸念。正しい技術をいかに伝えていくかもジュニア活動の使命と考えている。

 何よりも、野球という競技を通じて“人生を生き抜くスキル”を学んでほしいというのが、ライオンズジュニアの強い想い。保護者や所属チームも含めた“ワンチーム”で、本大会での勝利はもちろん、子どもたちをその先の、より良い将来へ導いていく。

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