日の丸背負う“逸材小学生”に備わる資質とは? 三刀流コーチも唸る技術以前の「差異」

公開日:2024.11.11

文:宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki

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侍ジャパンU-12代表の公募コーチ・野下卓泰氏は少年野球・大学講師・体育教員の“三刀流”

 日の丸を背負う子どもたちには、野球が上手いだけでない“資質”があるという。11月23日から愛媛県松山市・今治市で行われる「第11回 BFA U12アジア野球選手権」に挑む小学生世代の侍ジャパンU-12代表。監督はかつて巨人などで強打の二塁手として鳴らした仁志敏久氏(来季から西武野手チーフ兼打撃コーチ)、投手コーチは日本ハムなどで活躍した江尻慎太郎氏が務めるが、コーチがもう1人、公募で選出されている。

 少年野球チーム「横浜Jブルーウインズ」の代表を務めるかたわら、横浜国大の教育学部講師の肩書を持ち、横浜国大教育学部附属鎌倉小学校で非常勤の体育教員としても、週8コマの授業を受け持っている野下卓泰氏。27歳にして、少年野球の選手、小学校教員の“卵”、一般小学生を教えているエキスパートだ。ちなみに「横浜Jブルーウインズ」は、ライトに野球を楽しむ「Sクラス」、「Aチーム」(小5、6)、「Bチーム」(小1~4)にクラス分けし、ユニークな活動を行っている。

 侍ジャパンU-12代表コーチの“公募枠”への応募資格は、今年8月の「第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」の全国大会に出場した監督かコーチ、または、日本スポーツ協会(JSPO)公認スポーツ指導者資格「コーチ3」を保有していること。野下コーチは大学時代に「コーチ3」を取得済みで、書類選考と面接を勝ち抜いた。

 11月2日から3日間、神奈川県内で行われた強化合宿では、代表選手15人を相手にノックバットを振るい、きめ細かく1人1人に声をかける野下コーチの姿があった。「U-12代表の選手たちは、技術レベルが高いことはもちろん、考え方が違いますね」と感嘆。

「たとえば、ウチのチーム(横浜Jブルーウインズ)では、失敗した時に弱気になってしまう子が多いのですが、U-12代表の子たちは、そんなことが全然ありません。失敗しても、すぐ次のプレーへ向かっている。全国大会の経験がある選手が多いせいか、強気で、自信を持っていて、切り替えが早い」と指摘するのだ。「ウチのチームに帰ったら、『君たちの同年代には、こういうことを考えながらやっている子たちがいるのだよ』と伝えたいと思います」とうなずいた。

「元プロでもなければ日本代表経験もない自分の役割とは、何だろう」

「普段子どもを教え、育てる立場の知見を生かしたい」と語る【写真:宮脇広久】

 野下コーチ自身、元プロの仁志監督や江尻投手コーチとは違う役割を担っていると自覚している。

 現役時代は神奈川県立相模原高、横浜国大で165センチの小柄ながら、左腕投手としてプレーしていた。「僕は元プロでもなければ、日本代表経験もない。自分の役割とは何だろう?」と何度も自問自答したそうで、「子どもたちに一番年齢が近いから、コミュニケーションを取っていこう」と思い当たった。仁志監督は53歳、江尻投手コーチは47歳で、確かにひと際若い。さらに「普段子どもを教え、育てる立場で働いているので、その知見を生かせたらと思います」と付け加えた。

 一方で、「仁志さん、江尻さんとたくさんお話をさせていただく中で、 一言一言がとても勉強になっています」と“元プロ”に触れる効果を実感している。

 教育者として「子どもたちが自分の可能性を信じられること。そのためにまず、僕が1人1人の可能性を絶対に信じてあげて、何か1つでもいいからやってみようと、子どもの心に火をつけること。それがジャパンでも、普段のチームでも、学校でも同じ、僕の人生のテーマです」と言い切る野下コーチ。躍動感あふれる若手指導者が、幼い“侍”たちを熱く鼓舞する。

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