米国式指導に感銘「全て選手ファースト」 元ドラフト候補が中学野球監督になったワケ

文:橋本健吾 / Kengo Hashimoto

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日米の独立リーグを経験した妹尾監督が率いる「兵庫フロッグスポニー」

 兵庫県姫路市で、異色の中学硬式野球チームが誕生した。米国式の選手育成に特化し今年1月に創設された「兵庫フロッグスポニー」(以下兵庫フロッグス)。監督を務めるのは日米の独立リーグで活躍し、ドラフト候補にも挙がった妹尾克哉氏。「高校入学までにスキルを上げる」ことをテーマに、次世代のトップ選手を育成するため死力を尽くしている。

 妹尾氏は兵庫の名門・神戸国際大付高出身の25歳。高校時代は甲子園出場こそないが、その後は四国アイランドリーグ、ルートインBCリーグ、九州アジアリーグと3つの独立リーグでプレー。米国球界にも挑戦し、北米独立リーグ「カナディアン・アメリカン・リーグ」では打率.339をマークしドラフト候補として話題を集めた。

 日本の独立リーグでは2018年に首位打者とベストナイン、2022年には最多安打を獲得。新型コロナウイルス感染拡大の影響で断念となったものの、2020年にはアメリカン・アソシエーションの「ゲーリー・サウスショア・レイルキャッツ」と契約するほどの選手だったが、3度の指名漏れを経験。昨年に現役を引退し指導者に転身した。

「プロを目指していましたが、自分自身としてはやり切ったので悔いはありません。ただ、米国を経験したことで野球観は変わりました。向こうは全てに対して選手ファースト。甘やかすのではなく、自分で考える力が必要。トップダウンの指導ではなく、悩んだり困った時に最善のアドバイスができるかが大事。本気で高いレベルを目指す子どもたちのサポートをしたいと思いました」

日本と米国の違い「選手たちが意見を言える」

兵庫フロッグスポニーの選手たち【写真:橋本健吾】

 日本と米国の一番の違いは「選手たちが意見を言える」ことだという。指導者と選手が密にコミュニケーションを取り、指導の中でわからないことがあれば「なぜ? これは違うのでは?」と、選手側からも遠慮なく質問する。指導者も感覚的ではなく、正解に至るまでの過程や理論を説明できる環境が整っている。

 自身の経験を踏まえ、チームの練習でも、まずは自分たちで考えて動くことを意識させている。「バッティング、キャッチボール、様々なドリルをやるために個々でどんな準備が必要か。流れだけでやらず、先を見る力も養うことが大切」と、ウオーミングアップもメニューを与えてからは個々で行っている。

 兵庫フロッグスが掲げる最大のテーマは「上のレベルで通用する育成」だ。妹尾監督は自身の経験や、これまで関わった野球人たちと意見交換するなかで「高校野球では指導者の数も少なく、的確な指導が1人1人に伝わりずらい。高校入学までにスキルを上げることが活躍する一番の近道」と感じたという。

「高校に入ればライバルとの競争に勝たないといけません。同じ練習をやっていても差は埋められません。スキルや理論を持っていれば迷うことは少ない。スタートの段階で周りに負けない選手になるために私たちがサポートしていく。それが指導者の役目だと思っています」

 今年1月にチームを設立し、1期生は20人が集まった。リーグ戦やリエントリー制度があるポニーリーグは、“育成”をテーマに掲げる兵庫フロッグスと理念が一致する。「少しでも長く野球人生を歩んでほしい。個の力を高めて、自分をどんどんアピールしてほしい」と妹尾監督。兵庫・姫路で産声を上げた、若きチームの挑戦が始まった。

【動画】高校入学までに「スキルアップを」 兵庫フロッグスポニーの“米国式練習”の様子

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