“下手くそ”な元控え選手が感謝する叱咤 高校進学後に痛感「監督の無視が一番つらい」

公開日:2024.10.09

更新日:2024.10.14

文:喜岡桜 / Sakura Kioka

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「ポニー筑後リバーズ」入部英徳監督は看護師経験を生かし中学硬式野球日本一へ導く

 ふと自身の指導を振り返ると、主力選手にばかり話をしてしまってはいないだろうか。9月8日に行われた「2ndエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」で、中学硬式5リーグの頂点に輝いた「ポニー筑後リバーズ」(福岡・筑後市)の入部英徳監督は、野球を熱心に教えながら、日中は精神科の看護師として働いている。First-Pitchでは小・中学世代で日本一を成し遂げた監督に取材。選手たちの感情の浮き沈みを察知し、仕事の経験も生かしながら、全員平等の指導を心掛けているという。

「試合に出ている子たちはいつも、みんなの目に晒されるからいいんですよ。いろんな変化に気付いてもらいやすい。3年生は9人しかいないんですけど、そのうち2人はエイジェックカップのときにメンバーから外れていたんです。そんな、試合に出られない子たちに、どれだけ目を配れるかが大切だと思いますね」

 普段から選手に「厳しく声をかけがち」という入部監督だが、子どもたちの様子を観察しながら、1週間で全員に何かしら声をかけるようにしている。「体が大きくなったな」「気を付けて帰れよ」「ご飯食べろよ」「ちゃんとタスキ(夜道で反射する交通安全グッズ)してるか?」……。そうしたたわいもない言葉でも、選手たちにとっては「うれしいものなんですよ」と語り、次のように続けた。

「病院で働いていても、例えば、入院中にご両親が亡くなって帰れる場所がないとか、そうした、つらい身の上話を患者さんがしてくれることもあります。このような場合、たくさん会話をすることで落ち着いてくるんです。歩み寄ることってすごく大事なんですよ」

相手にされなかったことが一番つらい…教え子の言葉が全員平等指導の教訓に

ポニー筑後リバーズの入部英徳監督(左)【写真:編集部】

 元気な中学生の子どもたちに対しては、必要に応じて叱ることも、この声かけに含まれる。ある卒団生の言葉をきっかけに、入部監督はそう感じるようになったと話す。

「『高校に行ったら、僕、下手くそなんで、監督から声をかけてもらえないときがありました』と言うんですよ。叱られてもいいから、声をかけてほしかった。存在を無視されているようで、相手にされなかったことが一番つらかったと。中学時代はあまり目立たない子だったんですけども、『筑後リバーズでは監督にいつも叱られとった』と。時間が経ってみると、すごくありがたいことだったんだと感じたようです」

 今年の3年生とは、練習を中断して衝突することも多かった。しかし、2人きりで話す場を設けるなどして、選手たちのプライドを守りながら、心情に寄り添ってきた。

 今回メンバー外だった3年生2人に対しても同様だ。「野球の指導も、病院の仕事と同じで、人間ウォッチングです。気持ちのことも含めて何事も、早めに手を打たないといけない」と語る入部監督は、今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定。選手が「孤独」に感じることのない指導論の一端を明かしてくれる。

中学硬式野球日本一…ポニー筑後リバーズの指導・練習法を紹介!

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