遠征費かさむのも「大人の仕事」 完全アウェーで全国連覇…逆境を覆す“環境整備”
“小学生の甲子園”全日本学童マクドナルドT連覇…大阪・新家スターズの準備と対策
史上3チーム目の連覇を果たした要因は、グラウンド内外での徹底した“準備と対策”にあった。22日に東京・明治神宮球場で決勝が行われた“小学生の甲子園”「高円宮賜杯 第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」は、大阪・新家スターズの2年連続Vで幕を閉じた。全国約1万もの学童チームがある中で、連続で頂点に立つのは至難の業。1979年創設のチームを率いて17年目となる千代松剛史監督は、「連覇できたことで、やってきたことが間違いじゃなかったと思えることは大きいですね」と喜びを噛み締めた。
前年度優勝による出場枠がありながら、全く気の緩みも隙もなかった。激戦区・大阪府予選に“挑戦者”として臨んで優勝。7月末の「高野山旗全国学童大会」でも連覇を果たした。盤石の状態で大会に入り、船橋フェニックス、不動パイレーツ(東京)ら地元・関東の強豪勢と次々と当たる“完全アウェー”の厳しい山を勝ち抜いた。
犠打やゴロ、盗塁を絡めて走者三塁の形を作り、コツコツ点を重ねて投手中心に守り勝つのがスタイル。決勝の兵庫・北ナニワハヤテタイガース戦は、そんな“らしさ”を存分に発揮した。相手の変幻自在の守備シフトをものともせず、逆方向へと打ち返して12安打11得点。守っては庄司七翔(6年)ら投手陣を軸とした堅守で、関西のライバルをゼロに封じた。
新家スターズの本拠地は、大阪府南部、泉南市の小高い丘の上にある。関係者が藪を切り開いて作り、ナイター設備も据え付けたという専用グラウンドで、平日は火・水・木曜と練習。週末の実戦で得た課題や反省を平日3日間で徹底的に対策し、また実戦に挑むというサイクルでチームを成長させてきた。
この決勝戦も、途中から豪雨に見舞われたが、盛んにロジンをつけてボールの滑りを気にする相手とは対照的に、新家ナインは平然と打球を処理し続けた。そこには2年前の2022年大会、雨中の準決勝で悪送球により逆転負けを喫した、苦い経験がある。
「内野手が雨でボールを滑らせてしまった。それからは雨の日にもシートノックをやるようにしています。今日の天気は、相手の方が嫌やったと思いますよ」
土壇場で飛び出した“初本塁打”「魂みたいなものが乗り移った」
そうした準備や対策は、たとえ大舞台でも、どんな状況に置かれても、選手たちが「普段通りの力を出せるように」という信念に基づいている。今大会に向けても、朝8、9時台の試合に備えて、早朝4時半に起床し6時からグラウンドで練習する生活リズムを整えた。「短時間集中で練習することで、暑さ対策にもなった」と千代松監督。多くの遠征組が苦慮した、初日の台風順延による練習場所確保も、コネクションを生かして都内の室内練習場を利用することができた。
千代松監督と二人三脚でチームを運営する吉野谷幸太コーチは、「遠征が多いプロ野球選手とは違って、普段は家から通って試合をやるのが小学生。その中で、遠征で大会に来ても普段通りにプレーができるよう、環境を整えるのが僕ら大人の仕事だと思っています」と説明する。
遠征費用がかさんだとしても、試合会場の神宮に最も近い宿舎やグラウンドを押さえているのも、それが理由だ。「以前はお金の面も考えて(会場から離れた)安いところに泊まったりもしましたが、どうしても移動距離が負担になってしまう」と吉野谷コーチ。今回は1日順延で延泊となり「こうなると何百万円になるか……」と苦笑するが、「それだけ子どもたちが頑張っているということ。保護者の皆さんとも協力しながらですね」と語った。
連勝街道の中、「正直、かなりやばいと思った」と千代松監督が唯一振り返ったのが、初戦2回戦の埼玉・山野ガッツ戦。打ち合いを挑んできた相手に、3回までに5-7と劣勢。しかし、時間制限で最終イニングとなった4回、日頃は守備で貢献する遊撃手・黒田大貴(6年)が起死回生の逆転3ランを放った。なんと、これが自身初アーチだった。
「これまで本塁打を打ったことのない選手が、ですよ。魂みたいなものが乗り移ったとしか思えない」と指揮官。逆境の中でも“普段通り”のメンタルがなければ、それ以上の結果を残すことはできないだろう。
藤田凰介主将(6年)は「チームの団結力で勝つことができました」と語った。環境を整えた監督・コーチ陣と保護者、それに結果で応えた選手たち。まさに一致団結しての連覇達成だった。
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