0勝敗退→翌年日本一の“大逆転” 痛恨ミス防止へ…綿密に描いた青写真と「創意工夫」

公開日:2024.03.02

更新日:2024.06.06

文:内田勝治 / Katsuharu Uchida

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DeNAジュニアを7年ぶり優勝に導いた荒波翔さん「音楽を流したら野球に切り替え」

 少年野球の指導者にとって、今後のチーム作りの参考になったことは間違いない。昨年12月に行われた「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2023」で横浜DeNAベイスターズジュニアの監督を務め、チームを7年ぶり2度目の優勝に導いた荒波翔さんが、2月18日、神奈川・横須賀市の球団施設「DOCK」で、主に小学生を教える野球指導者向けの講習会で講師を務めた。

 荒波さんは講演の中で、日本一に輝くまでに行ったチーム作りの過程を披露。約680人の中から選ばれた精鋭16選手といえども、まだ小学生であり、集中力が散漫になることも少なくない。意識したのは「どうすれば子どもたちが、遊びから本気モードになるか」ということ。その中で取り入れたのは「音楽」だ。

「ベイスターズのトップチームも2軍の選手も、同じ音楽をかけてアップをしたりすることを1年間通してやっています。子どもたちは学校でチャイムが鳴ったら、教室に戻って席に座って、勉強のモードに変わるというのを聞いて、じゃあウオーミングアップで音楽を流したら野球に切り替えるということを習慣づけようと。1試合目に勝っても、昼食を挟んだら2試合目は全然ダメだったとかは、よくあることなので、まずはメリハリをつけるところから始めました」

 少年野球で音楽を流しながら練習をするのに抵抗がある指導者であれば、手拍子でも、円陣での声出しでもいい。何かしらの「音」を合図に、集中モードへと切り替える。そうしてオンとオフを明確に区別することができたベイスターズジュニアは、大会4試合全てで逆転勝ちと、勝負どころで驚異的な集中力を発揮した。

外野を守れる選手を意識的に選出…みっちりと技術指導

講習会で講師を務めた荒波翔さん【写真:内田勝治】

 選手選考にもこだわった。監督就任1年目の2022年は投手と野手を中心に選出した結果、不慣れな外野を守る選手のミスが続出。1勝もできずに予選トーナメントで敗退した。

「僕らの頃は、ピッチャー、キャッチャー、ショートを守る子は、どのポジションもできるという時代でした。その感覚で行ったら、外野を任せた選手たちに大変な思いをさせてしまいました」

 外野手の失策は大量失点につながるケースが多く、絶対に防がなければならないミスの1つ。昨年は外野を守れる選手を意識的に選出し、荒波さんと球団スクールコーチの松本啓二朗さんがみっちりと技術指導。大会ではフライの“バンザイ”や後逸などの致命的なミスを防ぐことができた。

「後ろのフライをバーッと走って捕れる子とかを、セレクションでは見ていました。外野専門の選手が守っていると、投手にも安心感がある。引き続き外野専門の分野を作って、チーム作りをしていこうかなというのはあります」

 選考段階からしっかりとチーム作りの青写真を描き、短期間で子どもたちの特性を見極め、現場に落とし込む。“日本一監督”に輝いた荒波さんの言葉だからこそ、説得力がある。

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