元プロの肩書「全くプラス感じない」 誹謗中傷に手術3度も…身をもって伝えたい“心”

文:橋本健吾 / Kengo Hashimoto

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引退後に少年野球指導者へ…元オリックス・高橋功一氏「体が動く限り続けたい」

 体を酷使し、生命の危険にさらされたこともあった。それでも、指導する子どもたちのために全力を尽くす。グラウンドで熱い情熱を注ぐのが、兵庫のヤングリーグ「東加古川レッドアローズ」で代表兼GMを務める元オリックス・高橋功一氏。“元プロ”の肩書に慢心することなく、指導を続けている。

 現役時代は肩痛、腰痛、膝の靱帯損傷とボロボロの状態で引退。同チームの指導に携わってからも毎日のように打撃投手、ノッカーを務めたことで心身は限界に達していた。3年前には心臓の手術を2度経験し、昨年は右肘の手術を行った。

 今年で53歳を迎えるが、今もなおグラウンドに立ち続ける。「1日何百球を投げるのは当たり前。近年は体力も落ちてますが体が動く限りは続けていきたい。まだ中学生レベルなら、私のボールでもいい練習相手になる。少しでも高いレベルを感じ取ってほしい」。痛いかゆいは二の次。全ては子どもたちの成長のため、腕を振り続けている。

 チーム創設当初は周囲から「どうせ指導はできない」「プレーヤーと指導は別物」などと、心ない誹謗中傷を受けたこともあった。現役時代は日本シリーズにも登板し12年間のプロ生活を送った自負もあったが、元プロ野球選手の肩書は「全くプラスに感じないですよ」と笑う。それでも、自ら投げて打ってを体現し、子どもたちへ実際の動きを見せることで信頼を勝ち取ってきた。

教え子が書き綴った野球ノートを見て「間違いではないと確信できた」

 子どもたちには道具の扱いや挨拶など、人間教育の部分を疎かにすると厳しい言葉で注意する。「怒ってばかりの指導者」と揶揄されたこともあったが、高橋氏はそれを否定する。

「もちろん、罵声や暴力は必要ない。ですが、本当にダメなことは大人が注意しなければいけない。優しいだけでは子どもたちが将来、不幸になる。指導でも実際に動きを見せることが大切。ずっと座ってるだけでノックも打たない指導者は淘汰されるべきだと思っています」

 情熱を持った指導は子どもたちにも確実に伝わっている。チームでは野球ノートの提出を義務付けているが、甲子園にも出場した教え子の一人が書き綴った言葉に目を赤くしたという。

「このチームはどんなチームですか? との質問に『心を教えてくれるチーム』と書いていった。これはうれしかったですね。人数もいなくて、全国に出る強豪でもない。それでも、今までやってきたことは間違いではないと確信できた。こちらが行動を見せていれば思いは伝わる」

 チームの入団条件は創設当初から変わらず「野球が好き、上手くなりたい」こと。セレクションもなければ、レギュラーや補欠といった色眼鏡で見ることもない。「言い方は悪いけど、下手くそ万歳。野球に自信がなければウチに来い、ちゃんと送り出してやると。自分自身にもプレッシャーをかけてやっています」と高橋氏。子どもたちが心身共に充実した野球人生を送ることをモットーに、指導を続けている。

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