上手くなりたいなら「発言しよう、考えよう」 中学生の長所伸ばす元プロの指導
女子野球の監督で2度の日本一、元プロ広橋公寿氏は「青山東京ボーイズ」の監督
かつて西武などでプレーし、プロ野球での指導者経験も豊富な広橋公寿氏は、中学硬式チーム「青山東京ボーイズ」の監督としての信念を持って子どもたちに接している。過去に楽天リトルシニア総監督で東北大会優勝、エイジェック女子硬式野球部監督時代の2021年には全日本選手権優勝など年間で日本一2回を達成した実績も生かし、それこそ全身全霊で取り組む。「自分の長所を知りなさい」「自分の得意なところはどんどん伸ばしていきましょう」……。その指導の極意に迫った。
「挨拶」「礼儀」。広橋氏の教えはまずそこから始まる。技術指導はその先。基本からの応用をしっかり学ばせることで、怪我のリスクを減らす。その中から「その子の一番いいところを見いだす」という。「遠くに飛ばせるとか、球が速いとか……」。そんな長所を生かすために、まず下半身主導の教え方をする。「下がついて、上がついてくるんだよって教えます。体幹トレーニングはしっかりやりましょうってね」。
もちろん、いろんなタイプの子どもたちがいる。「体が大きくても使い切れない子が当然、多いですね。逆に体が小さくても使いこなせる子とかはレベルが高いです」。わからないことがあれば、質問はどんどん受け付け、いろいろ問いかけながら教えていくのも広橋氏のスタイルだ。「どうしても短所があれば、平均値に近くなるように努力しましょう」と声をかけ、その修正にも動く。キャッチボールでの足の使い方、バッティングでの足の使い方など細部にわたってそれこそ手取り足取りの指導だ。
練習は土曜、日曜、祝日が中心だが「それだけで上手くなろうなんて甘いよ、日々の努力だよ、家でもやらないとダメだよって話しています。みんなやっていると信じてますよ」と広橋氏はいう。素振りの動画を送ってもらって指導することも多いそうだが「でも『これ、どうですか』ではダメ。『この辺を注意して振ってましたが、どうでしょうか』だったら、ものすごい量で返しますよ」。自分で考えることも大事。それをわかってほしいからだ。
「ヒントを与えて考えさせることもあります。たとえば投内連係を教えながら、セカンドはこういうときはどこに行くって聞くんです」。そして「間違ってもいいから発言しよう、考えよう」と呼びかける。広橋氏は「間違っていれば修正すればいい。その方がいいんです」と力説し、さらに「今まで、できなかったことが、ひとつでもできたら褒めます。そうすれば、今の子は特に伸びやすいです」と言い切った。
青山東京ボーイズには親の当番制がない。「自由に来ていいわけです。そしたら、お父さんもお母さんもいろんなことを手伝ってくれるんですよ。ウチには選手とスタッフと保護者の一体感があるんです」と広橋氏は胸を張る。「声を出しながら、いろんなことをやりながら、楽しみながら練習するけど、結構ちゃんとした練習なんですよ。ウチは子どもファーストですから」。そこには迷いなどあるわけもない。「子どもたちは指導に飢えている。だからものすごく熱心に聞きますよ」と目を細めた。