「理解できなくてもいい」 独自路線で評価上昇…少年野球チームが描く“理想”の育成
12球団ジュニアに5人選出…個の能力伸ばす町田玉川学園少年野球クラブ
選手の育成に定評のある東京・町田市の少年野球チーム「町田玉川学園少年野球クラブ」(以下、町田玉川)は、豊富な打撃メニューで理想的なフォームが自然と身に付く工夫を凝らしている。体重移動の感覚を覚えるためには手作りのシーソーを使い、インサイドアウトの習得には「落合」と呼ぶメニューをこなしている。
町田玉川の知名度は近年、関東を中心に高まっている。“プロ野球選手の登竜門“と言われるプロ野球12球団ジュニアトーナメントに昨年は5人が選出され、OBは神奈川・桐光学園や山梨・駿台甲府といった強豪校で主力として活躍している。チームは将来を見据えた個の能力の育成を方針に掲げ、楽しみながら上手くなる練習を実践している。
例えば、打撃で重要になる体重移動の動きは、手作りのシーソーで感覚をつかむ。両足でシーソーに乗って軸足に傾けた状態で構え、トスされた球を打つ時に反対側の足を思い切り踏み込んでスイング。すると、自然に体重移動ができる。菊池拓平代表は「子どもたちに地面反力の説明をしても、理解するのが難しい部分があります。言葉だけでは体の動きを意識できないため、自然に動きが身に付く練習法を考えています」と説明する。
3度の3冠王に輝いた元中日・落合博満氏から名付けた練習メニュー「落合」は、インサイドアウトの習得を目的としている。落合氏のように体を開いた状態で構えてティー台にセットした球を打つ練習で、内側からバットを出す動きが身に付く。
菊池代表は「上から叩こうとするとバットは外側から出るので、投球を点でしかとらえられません。インサイドアウトは投球の軌道上に長くバットの芯を乗せられるので、安打の確率が高くなり、飛距離も伸びます。小学生の段階で理解できなくてもよいので、中学や高校に行った時に練習の意図を知ってもらえばいいと思っています」と語る。今の小学生は落合氏の現役時代を見ていないが、逆方向にも本塁打を打てる選手になってほしいという菊池代表の願いが込められている。
町田玉川では他にも、穴の開いた小さなプラスチックボールを細いバットで打つ練習、片手でのティー打撃や歩きながらの素振りなど目的に合わせたメニューを組み合わせている。選手の興味や効果を見ながら、メニューをアップデートしているという。
菊池代表は書籍やSNSから野球に関する情報を集め「全てをチェックしている自信があります。自分が知らない情報を保護者が把握していて、質問に答えられなかったら指導者失格だと思っています」と話す。言葉で理解するのが難しい小学生の年代は、練習メニューの工夫が一層重要になる。