子どもの投げ方で増える誤った“ボールの向き” 肘痛の要因に…元プロ警鐘「明らかに危ない」

公開日:2025.10.29

文:尾辻剛 / Go Otsuji

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元ロッテ・大嶺祐太氏、誤った投げ方の認識に注意喚起

 その投げ方を続けていると故障する――。ロッテ、中日で投手としてプロ野球生活を16年間送った大嶺祐太氏は現在、球界を離れて都内で飲食店を経営しつつ、定期的に少年野球の指導を行っている。最近の投球指導で、間違った取り組みをしている子どもが多いことに驚いているという。それは、テークバックをとった時の「ボールの向き」にある。

「投げる時、トップの位置でボールは外を向いていないといけない。でも頭の方を向いている子がメチャクチャ増えている。6人中3、4人とかいるんですよ」

 右投手は投球時、普通に腕を上げるとトップの位置で握っている球は三塁方向を向いている。それが手首を返して正反対の一塁方向や、自分の頭の方向を向いている子どもが増えているというのである。

 原因は不明だが、過去にYouTubeで「投げる時に『ボールを頭に当てなさい』と教えているのを見たことがあります」と世間的に浸透している可能性を示唆。「肘を下げたくないとか、しっかり上げたいということで分かりやすい教え方のようですけど、間違っていると思います」と力を込めた。

「僕は『手の甲を耳の近くに持っていくんだったら分かるけど、ボールを耳に持っていくのはダメだよ』って言ってます。それを指導者の方が気づいていないのが怖いなと思いました。それで球数を投げさせると大変なことになると感じます」

増える肩や肘への負担「明らかに危ない投げ方をしている」

ロッテ・中日でプレーした大嶺祐太氏【写真:尾辻剛】

 トップの位置で手首をひねって球が自分の頭の方向を向いているということは、それで投球すると自然に腕を上げた状態に比べて肩や肘への負担が大きくなるということでもある。「明らかに危ない投げ方をしているんですけど、子どもたちは投げたいから『痛い』ってなかなか自分から言わないんですよ」。そういって警鐘を鳴らす。

 大嶺氏は現役時代に肩や肘の怪我に苦しみ、右肘のトミー・ジョン手術を受けた経験もある。痛みが分かる分、故障防止へ細心の注意を払っており「『この投げ方ならこの辺が痛いんじゃないの?』って話をして、ちょっと肘を触ると『痛っ!』ってなる」と最近の事情を説明した。

「『痛いんだったら投げない方がいいよ』って伝えると、そこで初めて『お前、痛かったんだ』って感じで気づく保護者もいるんです。投げるのが好きな子は特に、そんな傾向があります。その時は保護者やチームの指導者に『これだったら当分、投げさせない方がいいですよ』って伝えます。今は大丈夫でも、もう少ししたら取り返しがつかないことになる可能性がある。長期離脱になりますから」

 ただ、チーム事情や公式戦の日程の都合などで、どうしても無理するケースも出てくるという。「どこを見据えているかじゃないでしょうか。この大会がどうしても大事だというなら大事にしてもいいですし、今後を見据えているなら『投げさせない方がいいと思います』という話をしています」。

 痛みを感じたら無理は禁物。痛みを発生させないためには、正しい投げ方を習得してから、投げ込みを行うことが大切だ。そうすることで怪我防止につながり、投球の質も高まっていく。

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